ハルくんは一瞬俯いてから、ゆっくり顔をあげて言った。
「…そうだよ。キスなんてしない。そんなこと分かってんだよ」
「じゃあ、なんで、」
「なんで、分かんねーんだよ」
……三日前から、ずっと。頭が痛い。
ハルくんのことも、柳くんと通話したときの内容も、全部分からない。
分からないことだらけで、疲れる。
「ずっと、言ってるじゃん…。頭悪いから分かんないって…! 分かるように教えてよ!なんで言ってくれないの…!?」
……初めて、かも。
ハルくんに向かって、こんな大声出したの。
しかも、道端で。
ハルくんは、何故か傷ついた顔をして黙り込んだ。
「…。」
……あーそうですか。
また、何も言ってくれないんですか。
バカだから、何言っても分かんないって?
「幼なじみは、キスなんてしない」
…それは、さっき聞いたから。
ハルくんは私を見下ろす。
冷たい目で。
「手繋ぐことも、ハグも、一緒に寝ることも、俺らがしてること全部、しねーんだよ」
ズボンのポケットに両手を突っ込んで、私を置いていく。
歩き出したハルくんの背中。
そのときに見えた目は、冷たいというよりも――憎しみ。 鋭くて、怖かった。
胸がぎゅっと縮む。
あんな目、初めて見た。



