野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)下

衛門(えもん)(かみ)様のご正妻(せいさい)(おんな)()(みや)様は、(ちち)上皇(じょうこう)様がご出家(しゅっけ)なさったあと、(はは)御息所(みやすんどころ)のご実家で母君(ははぎみ)とお暮らしになっている。
本来は婿君(むこぎみ)としてそちらにお帰りになるべきだけれど、こっそりとご自分のご実家にお帰りになった。
横になっても眠ることはおできにならない。

<動物の夢を見たからといって、必ずしも姫宮(ひめみや)様がご懐妊(かいにん)なさるわけではない。夢に現れたあの(ねこ)は何を伝えたかったのだろう。それにしてもとんでもない(あやま)ちを(おか)してしまった。世間に顔向けができない。
姫宮様の品位に傷をつけたのはもちろん、私自身の(はじ)でもある。(みかど)のお(きさき)様と関係を持ってしまったほどの(つみ)ではなくても、源氏(げんじ)(きみ)に知られて(にら)まれたら、恐ろしくて消えたくなってしまうだろう>
今さらそんなことに気づいてぞっとなさるの。