野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)下

「あれからどうなった」
と毎日のように衛門(えもん)(かみ)様から責められた小侍従(こじじゅう)は、機会を見つけるといそいでお手紙でお知らせした。
内心(ないしん)では大よろこびしながらも、人目(ひとめ)をしのんでそっと衛門の督様はお越しになる。
(われ)ながらあまりに恐れ多いことだから、姫宮(ひめみや)様を少し近くで拝見して、気持ちをお伝えできれば十分だ。そうすれば一言(ひとこと)お返事がいただけるだろうか、ご同情いただけるだろうか>

賀茂(かも)神社(じんじゃ)のお祭りの前日だったから、女房(にょうぼう)たちは明日の見物(けんぶつ)の準備でそれぞれ忙しくしている。
姫宮様のおそばにいるべき女房も、恋人に呼ばれて自分の部屋に戻ってしまったの。
お部屋に誰もいなくなったから、小侍従は衛門の督様を宮様のご寝室の近くに手引きした。
そんなところまで男性を入れたら危険すぎるのに。