野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)下

演奏がはじまった。
どの楽器もすばらしいけれど、とくに明石(あかし)(きみ)琵琶(びわ)は優れてお上手なの。
大昔から伝わった弾き方で音色が()みきっている。
あの台風の日以来、(むらさき)(うえ)のことを気にしておられる大将(たいしょう)様は和琴(わごん)をじっとお聞きになる。
やさしく愛嬌(あいきょう)のある音色に現代的な音色が混ざる。
いわゆる名人たちは和琴を重々(おもおも)しく弾くものだけれど、紫の上は華やかにお弾きになるから大将様には新鮮なの。
たくさん練習なさったのでしょうね。
源氏の君もほっとなさった。

女御(にょうご)様の(そう)は目立たないけれど、ところどころ聞こえてくるのが美しくて上品よ。
姫宮(ひめみや)様の(きん)はまだ初々(ういうい)しさがおありになる。
でも、一生懸命お習いになっているからたどたどしくはないし、他の楽器の音とよく合っているわ。
<お上手におなりになった>
大将様は感心なさって、(おうぎ)拍子(ひょうし)をとってお歌いになる。
源氏の君もときどきお声をお加えになる。
お若いころよりもご立派で、重みのある歌声がすばらしい。
大将様もよいお声の方だから、夜が()けるほどうっとりするような音楽会になっていく。