放課後になって図書館に行くと、すでに図書館の下駄箱には靴が数足入っていた。もう二、三年生が来ているんだね。
わたし以外の生徒が図書館を使っているところを見たことがないから、なんだか新鮮かも。
スリッパに履き替えて生徒証をかざしてゲートが開くと、今日はカウンターに寄らずに直接コワーキングスペースに向かう。図書委員会の集まりがある日はコワーキングスペースを貸切で利用できるんだって。
「しっ、失礼します……」
「おっ、来たなっ! 一年生っ!」
コワーキングスペース中に響き渡る大声でびっくりして飛び上がりそうになる。ここに心聖くんがいたら怒るだろうな。
「今年の一年はどんな図書委員か楽しみにしていた。俺も図書委員三年目。ラスト図書委員を共に担当してくれる後輩を待っていたぞ!」
見れば、コワーキングスペースの一角に大柄な男子生徒が座っていた。この熱苦しい性格はどことなく国下先生を思い出しちゃうな。
すると隣にいたショートカットの女子生徒がパシッと男子生徒の頭を叩く。「図書館では静かにっ!」と注意してくれたものの、その女子生徒もそこそこの声量だった。
先輩を相手に注意もできなくて、わたしはただ苦笑ことしかできずにいた。
「驚かせてごめんね。私たちは中等部三年生の図書委員なの。私は三年Bクラスの温品ラン。こっちは同じクラスの田名丞。私たちそれぞれ柔道部の部長も兼任しているの」
そう言って、温品先輩は「うるさくてごめんね」と顔の前で両手を合わせる。
言われてみれば頑丈そうな身体をしている田名先輩だけじゃなくて、大人っぽい温品先輩もすらりとした長身でどこかたくましい体型をしている。二人とも白い柔道着が似合いそうで、ついクスリと笑ってしまう。
「ちなみに私もこれで三回目。つまり一年生の時から連続で図書委員を担当しているんだ」
「ということは、先輩たちは本が好きなんですか?」
「ううん。たまたまはずれくじを引かされるだけ。図書委員ってこの広い図書館の中を行ったり来たりして本を探さないといけないでしょう? 図書委員に限らず、図書館って体力勝負なの。カウンターに座ってのんびり図書館を利用する人たちの相手をするだけじゃない。戻ってきた本を棚に戻して、本を探してあっちこっちの棚を探して……大変なんだよ」
「体力や力持ちの奴が向いているからって、柔道をやっている俺たちが毎年押し付けられる。他のクラスもだいたいそんな感じだ。まあ、本が好きな奴ほどインドアで体力ないから指名されるのも仕方ないけどな」
「ちょっと! そういう思い込みは止めなって!」
ガハハと豪快に笑う田部先輩に温品先輩が突っ込みを入れる。この独特の空気や会話は運動が得意なスポーツ系ならではだと思う。頭を使わなくて良いというか、その時の気分で会話できて気が楽と言えば良いのか。
(とにかく怖い先輩たちじゃなくて良かった……)
朝礼で国下先生が脅すから心配していたけど、この先輩たちなら楽しい委員会活動ができそう。自然と頬が緩んでわたしも笑ってしまう。
それもあって三年間も図書委員を務めている先輩たちに聞いてみたくなったのだった。
「ところで先輩たちは『ビブリティカ』っていう、図書館を手伝ってくれる男の子たちを知っていますか?」
「いいや。俺は知らないな……温品は知ってるか?」
「私も知らない。でも図書館を手伝ってくれる子たちがいるのは嬉しいね。この図書館は広いから本を棚に戻す仕事が一番大変で……」
「わかるぞ、その気持ち。場所を覚えないと、螺旋階段を何往復もすることになるからな」
うんうんと両腕を組んで頷く田部先輩に、「一年の頃は足がパンパンになるくらい往復するよね〜」と温品先輩も同意する。
やっぱり総玖くんたち「ビブリティカ」のことを知っているのは、あるじ候補のわたしだけなのかな。
首を傾げていると、「懐かしいね」と言いながらコワーキングスペースに入ってくる年若いエプロン姿のお兄さんがいたのだった。
わたし以外の生徒が図書館を使っているところを見たことがないから、なんだか新鮮かも。
スリッパに履き替えて生徒証をかざしてゲートが開くと、今日はカウンターに寄らずに直接コワーキングスペースに向かう。図書委員会の集まりがある日はコワーキングスペースを貸切で利用できるんだって。
「しっ、失礼します……」
「おっ、来たなっ! 一年生っ!」
コワーキングスペース中に響き渡る大声でびっくりして飛び上がりそうになる。ここに心聖くんがいたら怒るだろうな。
「今年の一年はどんな図書委員か楽しみにしていた。俺も図書委員三年目。ラスト図書委員を共に担当してくれる後輩を待っていたぞ!」
見れば、コワーキングスペースの一角に大柄な男子生徒が座っていた。この熱苦しい性格はどことなく国下先生を思い出しちゃうな。
すると隣にいたショートカットの女子生徒がパシッと男子生徒の頭を叩く。「図書館では静かにっ!」と注意してくれたものの、その女子生徒もそこそこの声量だった。
先輩を相手に注意もできなくて、わたしはただ苦笑ことしかできずにいた。
「驚かせてごめんね。私たちは中等部三年生の図書委員なの。私は三年Bクラスの温品ラン。こっちは同じクラスの田名丞。私たちそれぞれ柔道部の部長も兼任しているの」
そう言って、温品先輩は「うるさくてごめんね」と顔の前で両手を合わせる。
言われてみれば頑丈そうな身体をしている田名先輩だけじゃなくて、大人っぽい温品先輩もすらりとした長身でどこかたくましい体型をしている。二人とも白い柔道着が似合いそうで、ついクスリと笑ってしまう。
「ちなみに私もこれで三回目。つまり一年生の時から連続で図書委員を担当しているんだ」
「ということは、先輩たちは本が好きなんですか?」
「ううん。たまたまはずれくじを引かされるだけ。図書委員ってこの広い図書館の中を行ったり来たりして本を探さないといけないでしょう? 図書委員に限らず、図書館って体力勝負なの。カウンターに座ってのんびり図書館を利用する人たちの相手をするだけじゃない。戻ってきた本を棚に戻して、本を探してあっちこっちの棚を探して……大変なんだよ」
「体力や力持ちの奴が向いているからって、柔道をやっている俺たちが毎年押し付けられる。他のクラスもだいたいそんな感じだ。まあ、本が好きな奴ほどインドアで体力ないから指名されるのも仕方ないけどな」
「ちょっと! そういう思い込みは止めなって!」
ガハハと豪快に笑う田部先輩に温品先輩が突っ込みを入れる。この独特の空気や会話は運動が得意なスポーツ系ならではだと思う。頭を使わなくて良いというか、その時の気分で会話できて気が楽と言えば良いのか。
(とにかく怖い先輩たちじゃなくて良かった……)
朝礼で国下先生が脅すから心配していたけど、この先輩たちなら楽しい委員会活動ができそう。自然と頬が緩んでわたしも笑ってしまう。
それもあって三年間も図書委員を務めている先輩たちに聞いてみたくなったのだった。
「ところで先輩たちは『ビブリティカ』っていう、図書館を手伝ってくれる男の子たちを知っていますか?」
「いいや。俺は知らないな……温品は知ってるか?」
「私も知らない。でも図書館を手伝ってくれる子たちがいるのは嬉しいね。この図書館は広いから本を棚に戻す仕事が一番大変で……」
「わかるぞ、その気持ち。場所を覚えないと、螺旋階段を何往復もすることになるからな」
うんうんと両腕を組んで頷く田部先輩に、「一年の頃は足がパンパンになるくらい往復するよね〜」と温品先輩も同意する。
やっぱり総玖くんたち「ビブリティカ」のことを知っているのは、あるじ候補のわたしだけなのかな。
首を傾げていると、「懐かしいね」と言いながらコワーキングスペースに入ってくる年若いエプロン姿のお兄さんがいたのだった。



