(司書さんが直したのかな?)
今朝、国下先生に本を返したお礼を言われた際にこの図書館の司書さんについて聞いたけど、ここの司書さんはおじいちゃんの司書さんが一人で図書館を管理しているんだって。会ったことはないけど、その人が歴彦さんたちが話していた図書館長――図書館で一番えらい人なのかも。
一人でこんなに広い図書館を管理していたら全ての本を並べられないよね。ということは、これも「ビブリティカ」の総玖くんたちのおかげ?
わたしが帰った後に総玖くんが元通りに戻したのかも。わたしだって仮にも図書委員だし、少しくらい手伝えば良かったかな。
(でも本について詳しくないわたしが手伝ったところで、総玖くんたちの仕事が減るわけじゃないもんね)
それどころかわたしに仕事を教えるっていう手間を増やすだけかも。きっともう少ししたら図書委員の集まりがあるから、その時にみんなで司書さんから教わった方が、わたしも総玖くんも時間を節約できるからいいよね。
「総玖くん、いないのかな……」
「呼んだか?」
何気なく呟いた言葉に答えるようにすぐ近くから総玖くんの声が聞こえてきたからか、つい驚いて「うわぁ!?」と大声を上げてしまう。
すると総玖くんに「バカっ!」と言って、口の前で人差し指を立てたのだった。
「あまり大声出すと、またミサトに怒られる。あいつは騒がしいのが嫌いだからな。『静かこそ、深く考えることや人との関係を良くする』っていう昔の教えを大切にしているんだよ」
「そっ、そうなんだ……」
それにしたってバカは言いすぎじゃない? ちょっと傷付くんだけど……。
「ところで総玖くんはどこにいたの? さっきまでいなかったよね?」
「オレたち『ビブリティカ』はあるじとなる人間に名前を呼ばれたらどこでも姿を現す。そうは言っても、この図書館の中に限られるけどな」
「でもさっき下で歴彦さんや心聖くんと話している時は出てこなかったよね。てっきり昨日のことを怒っていると思っていたんだけど……」
「昨日の……ああ。オレたちのあるじにならないって言ったことか?」
今まで忘れていたのか総玖くんは思い出したって顔をする。今まで忘れていたのかな。それだったらわたしだけ気にしていたみたいで、なんだか悔しいというか損したような気持ちになる。
「そうだよ。昨日は怒ってごめん。『ビブリティカ』とか、あるじのこととか何も知らないのに、よく話しも聞かないで怒っちゃって……さっき歴彦さんと心聖くんから聞いたよ。わたしが総玖くんたち『ビブリティカ』のあるじになれるかもって……」
「……あの後、歴彦から言われた。あんたの都合も聞かないでオレたちのあるじって決めつけるべきじゃなかったって。オレもその……」
言いづらいことなのかなかなか言葉にならなくて、口をもごもごと動かしていた総玖くんだったけれども、不意に自分の両頬を両手でパシンと思いっきり叩いてしまう。気合を入れているつもりなのかもしれないけど、痛くないのかな……。
「またここに来たってことは。本でも借りに来たのか?」
「ううん。ただなんとなく来ただけだったの。こんなにたくさん本があるのに全然読まれないのは勿体ないなって……」
周囲をぐるりと見渡しても、今日も他の生徒は見かけない。下の一階や二階も誰もいなくて、図書館にいるのはわたしと『ビブリティカ』の三人だけ。
歴彦さんが言っていたように、図書館を使う人が減っているのは本当なのかも。
すると、総玖くんは「そうだろう!」と食いつくように話し出す。
「本はただの暇つぶしじゃない。人の心を豊かにして、テストで良い点が取れるきっかけを作ったりストレスを軽くしたりするんだ!」
「勉強の役にも立つの?」
「国語の問題であるだろう。漢字の読み問題や書き取り問題。あれだって読書をしていれば自然と身に付くんだ。たまたま読んでいた本に出ていた漢字がテストに出たら、誰だって『ラッキー!』って思うだろう?」
「それはまあ……」
言われてみれば、小学校の漢字のテストの時に思い出せない漢字があって考えていたら、たまたま黒板横の掲示板に貼られていたポスターに答えの漢字が書かれていて「ラッキー」って思ったことがあった気がする。
本を読んでいたら漢字について詳しくなれるから、そういうことも増えるってこと?
「それだけじゃないぞ。他にも文章を読んで登場人物や作者の気持ちを答える問題だって、どんな気持ちか考えやすくなるからすらすらと答えられるようになる」
「そういった問題って、前後の文章を読めば答えられるものじゃないの?」
「……文字のままに受け取るなよ。少しは行間を読め」
「どういうこと?」
わたしが首を傾げたからか、総玖くんが教えてくれる。
たとえば、主人公が仲良しのイヌのマーチと喧嘩してしまったという場面があったとして。
本当はマーチが好きなのに「マーチなんてきらい!」って言ってしまったという文章で、「主人公はマーチがきらいなのか?」と答える問題があったとしたら、わたしはその直前の場面から「主人公は本当はマーチが好き」と答える。
でも読書をしていない人は主人公の気持ちが分からないから、「主人公はマーチがきらい」って答えてしまうみたい。
実際に主人公と同じように大好きな誰かと喧嘩したことがあれば正しい答えが分かるけど、わたしのように誰とも喧嘩したことがない人は分からないみたい。
「本を読んで登場人物の気持ちが分かって、同じ気持ちになれるのは、読書を何度もしている人ができることだ。あんたは本がきらいと言いつつもそれができている。それは本の読み方を知っている証拠だ」
「知らないよ。そんなの教わったことないもの」
パパもママもわたしが子供の頃は「外で遊んでばかりいないでたくさん本を読むように!」って口うるさく言っていたけれども、最近では何も言わない。
きっとわたしが興味無さそうにしているから、言うだけムダって思われたのかもしれないけど……。
それもあってここ最近はほとんど本を読まなくなったんだよね。だから本の読み方なんて知らないはず。
今朝、国下先生に本を返したお礼を言われた際にこの図書館の司書さんについて聞いたけど、ここの司書さんはおじいちゃんの司書さんが一人で図書館を管理しているんだって。会ったことはないけど、その人が歴彦さんたちが話していた図書館長――図書館で一番えらい人なのかも。
一人でこんなに広い図書館を管理していたら全ての本を並べられないよね。ということは、これも「ビブリティカ」の総玖くんたちのおかげ?
わたしが帰った後に総玖くんが元通りに戻したのかも。わたしだって仮にも図書委員だし、少しくらい手伝えば良かったかな。
(でも本について詳しくないわたしが手伝ったところで、総玖くんたちの仕事が減るわけじゃないもんね)
それどころかわたしに仕事を教えるっていう手間を増やすだけかも。きっともう少ししたら図書委員の集まりがあるから、その時にみんなで司書さんから教わった方が、わたしも総玖くんも時間を節約できるからいいよね。
「総玖くん、いないのかな……」
「呼んだか?」
何気なく呟いた言葉に答えるようにすぐ近くから総玖くんの声が聞こえてきたからか、つい驚いて「うわぁ!?」と大声を上げてしまう。
すると総玖くんに「バカっ!」と言って、口の前で人差し指を立てたのだった。
「あまり大声出すと、またミサトに怒られる。あいつは騒がしいのが嫌いだからな。『静かこそ、深く考えることや人との関係を良くする』っていう昔の教えを大切にしているんだよ」
「そっ、そうなんだ……」
それにしたってバカは言いすぎじゃない? ちょっと傷付くんだけど……。
「ところで総玖くんはどこにいたの? さっきまでいなかったよね?」
「オレたち『ビブリティカ』はあるじとなる人間に名前を呼ばれたらどこでも姿を現す。そうは言っても、この図書館の中に限られるけどな」
「でもさっき下で歴彦さんや心聖くんと話している時は出てこなかったよね。てっきり昨日のことを怒っていると思っていたんだけど……」
「昨日の……ああ。オレたちのあるじにならないって言ったことか?」
今まで忘れていたのか総玖くんは思い出したって顔をする。今まで忘れていたのかな。それだったらわたしだけ気にしていたみたいで、なんだか悔しいというか損したような気持ちになる。
「そうだよ。昨日は怒ってごめん。『ビブリティカ』とか、あるじのこととか何も知らないのに、よく話しも聞かないで怒っちゃって……さっき歴彦さんと心聖くんから聞いたよ。わたしが総玖くんたち『ビブリティカ』のあるじになれるかもって……」
「……あの後、歴彦から言われた。あんたの都合も聞かないでオレたちのあるじって決めつけるべきじゃなかったって。オレもその……」
言いづらいことなのかなかなか言葉にならなくて、口をもごもごと動かしていた総玖くんだったけれども、不意に自分の両頬を両手でパシンと思いっきり叩いてしまう。気合を入れているつもりなのかもしれないけど、痛くないのかな……。
「またここに来たってことは。本でも借りに来たのか?」
「ううん。ただなんとなく来ただけだったの。こんなにたくさん本があるのに全然読まれないのは勿体ないなって……」
周囲をぐるりと見渡しても、今日も他の生徒は見かけない。下の一階や二階も誰もいなくて、図書館にいるのはわたしと『ビブリティカ』の三人だけ。
歴彦さんが言っていたように、図書館を使う人が減っているのは本当なのかも。
すると、総玖くんは「そうだろう!」と食いつくように話し出す。
「本はただの暇つぶしじゃない。人の心を豊かにして、テストで良い点が取れるきっかけを作ったりストレスを軽くしたりするんだ!」
「勉強の役にも立つの?」
「国語の問題であるだろう。漢字の読み問題や書き取り問題。あれだって読書をしていれば自然と身に付くんだ。たまたま読んでいた本に出ていた漢字がテストに出たら、誰だって『ラッキー!』って思うだろう?」
「それはまあ……」
言われてみれば、小学校の漢字のテストの時に思い出せない漢字があって考えていたら、たまたま黒板横の掲示板に貼られていたポスターに答えの漢字が書かれていて「ラッキー」って思ったことがあった気がする。
本を読んでいたら漢字について詳しくなれるから、そういうことも増えるってこと?
「それだけじゃないぞ。他にも文章を読んで登場人物や作者の気持ちを答える問題だって、どんな気持ちか考えやすくなるからすらすらと答えられるようになる」
「そういった問題って、前後の文章を読めば答えられるものじゃないの?」
「……文字のままに受け取るなよ。少しは行間を読め」
「どういうこと?」
わたしが首を傾げたからか、総玖くんが教えてくれる。
たとえば、主人公が仲良しのイヌのマーチと喧嘩してしまったという場面があったとして。
本当はマーチが好きなのに「マーチなんてきらい!」って言ってしまったという文章で、「主人公はマーチがきらいなのか?」と答える問題があったとしたら、わたしはその直前の場面から「主人公は本当はマーチが好き」と答える。
でも読書をしていない人は主人公の気持ちが分からないから、「主人公はマーチがきらい」って答えてしまうみたい。
実際に主人公と同じように大好きな誰かと喧嘩したことがあれば正しい答えが分かるけど、わたしのように誰とも喧嘩したことがない人は分からないみたい。
「本を読んで登場人物の気持ちが分かって、同じ気持ちになれるのは、読書を何度もしている人ができることだ。あんたは本がきらいと言いつつもそれができている。それは本の読み方を知っている証拠だ」
「知らないよ。そんなの教わったことないもの」
パパもママもわたしが子供の頃は「外で遊んでばかりいないでたくさん本を読むように!」って口うるさく言っていたけれども、最近では何も言わない。
きっとわたしが興味無さそうにしているから、言うだけムダって思われたのかもしれないけど……。
それもあってここ最近はほとんど本を読まなくなったんだよね。だから本の読み方なんて知らないはず。



