そうしてわたしが企画した「図書館お宝さがしツアー!」は、二週間で幕を閉じた。
参加者は全校生徒の半分にも満たなかったけれども、イベントはおおむね好評。またやってほしいっていう声もあったんだ。
「……三十、三十一っと。よし! 回収した解答用紙はこれで終わり! 全問正解した奴がほとんどだな」
「うん。間違えた問題は再チャレンジできるってルールにしたから、同じ問題にチャレンジした人が多かったみたい。全問正解した人からは『もう少し難しい問題でもいいかも』って言われんだよね」
「それなら次回また開催する時は本を読んで答える問題を入れてもいいかもしれないね。答えが書いてあるページにしおりを挟んだりしてさ」
総玖くんと一緒に参加者から回収した解答用紙を数えてくれた心聖くんが閃いたというように言えば、文房具などの小道具を閉まっていた歴彦さんが大きく頷いた。
「簡単な問題は文字あつめ、難しい問題は本を読んで答えを見つけるというのもいいですね。今回参加した生徒さんたちもまた参加してくれそうです」
イベントが終了した翌日の放課後。わたしは図書館の三階にやってくると、「ビブリティカ」の三人と一緒にイベントの後片付けをしていた。
わたしが各本棚に貼っていた問題文を剥がしている間、総玖くんたちは乱れていた棚を直して、参加者から回収した解答用紙の枚数を数えてくれたんだ。
今回のイベントが大成功だったことで、国下先生が「ぜひ今度の学校との会議でイベントについて紹介したい!」ということで、参加した生徒の人数やクイズの内容、全問正解した人の割合をまとめて提出することになった。
わたしはこのイベントの発案者ということで、詳細をまとめるように頼まれたんだよね。
こういったイベントの企画や報告のまとめ作業は初めてだったけれど、総玖くんや歴彦さん、心聖くんが手伝ってくれたおかげで、スムーズにできたんだ。
「おい、チビサク。この本はお前の分類だろう。こっちに入れるな」
「うるせぇ! チビって言うな! お前だってたいして身長変わらないだろう!」
「おれはお前よりはわずかに高いからいいんだよっ! 図書館のことに詳しい『0類』のくせに一番チビなんてな!」
「背は低くても知識は誰よりもあるからな! お前も難しい言葉や考えばかり言ってないで、もっと柔軟に周りを見ろ!」
本棚を整理していた心聖くんと総玖くんが一冊の本を手に喧嘩を始める。それを歴彦さんが「止めてください。おふたりとも!」と声を掛けてくれるが、それもすでに見慣れた光景だった。
「総玖くんと心聖くんは相変わらずですね……」
「おふたりともうれしいのです。文さんが図書館に人を呼ぶきっかけを作ってくれましたので」
実はあのイベントに参加した人たちの大半は、図書館に一度も来たことがなかった人たちだったみたいで、今回のイベントをきっかけに来てくれるようになったんだ。
そうは言っても、ほとんどの人はコワーキングスペースでの自習が目的で、本を借りてくれる人はまだまだ少ないけどね。
「今度はコワーキングスペースに、図書委員のみんなで何か本に関する紹介文や展示をできないか相談してみようと思うの。図書館のオススメの本とか、作家さんとかを紙にまとめて壁に貼れないかなって」
「おっ、いいな。最初は十司英蒔なんてどうだ? 身内しか知らない情報を載せたり、本人にインタビューとかしたりしてさ。娘なら簡単だろう?」
「もうパパを引き合いに出すのはやめて……!」
わたしが恥ずかしかっていると、そこに心聖くんが割り込んでくる。
「コワーキングスペースには勉強に来ているんだ。それなら勉強に役立ちそうなニーチェやソクラテス、ルソーあたりの格言や名言の方がいいだろう?」
「バーカ! 誰がそんな難しいものを読むんだよっ! それなら地元の偉人の方がずっと親しみがあっていいに決まっている!」
「総玖さんも心聖さんも……やれやれ……」
またしてもケンカが始まったふたりに歴彦さんは苦笑しつつ肩を落とす。
「でも『喧嘩するほど仲が良い』って言葉がありますから」
「あるじである文さんが気にならないのならいいのですが。これは早く他の『ビブリティカ』に目覚めてもらわなければ私の身が持たなさそうです……」
とほほ、といった様子で歴彦さんは片付けが終わった道具を入れた段ボールを持って降りてしまう。
歴彦さんたち「ビブリティカ」が見えない人からしたら、段ボールだけ宙に浮かんでいるように見えないか気になるけれど、今のところはわたしくらいしか図書館にいないからいいのかな。
心聖くんまで歴彦さんの手伝いに行ってしまうと、残っていた総玖くんと目が合ってしまう。
総玖くんの明るい金髪が揺れたかと思うと、さっきまで喧嘩していた顔に柔らかな笑顔が浮かぶ。
参加者は全校生徒の半分にも満たなかったけれども、イベントはおおむね好評。またやってほしいっていう声もあったんだ。
「……三十、三十一っと。よし! 回収した解答用紙はこれで終わり! 全問正解した奴がほとんどだな」
「うん。間違えた問題は再チャレンジできるってルールにしたから、同じ問題にチャレンジした人が多かったみたい。全問正解した人からは『もう少し難しい問題でもいいかも』って言われんだよね」
「それなら次回また開催する時は本を読んで答える問題を入れてもいいかもしれないね。答えが書いてあるページにしおりを挟んだりしてさ」
総玖くんと一緒に参加者から回収した解答用紙を数えてくれた心聖くんが閃いたというように言えば、文房具などの小道具を閉まっていた歴彦さんが大きく頷いた。
「簡単な問題は文字あつめ、難しい問題は本を読んで答えを見つけるというのもいいですね。今回参加した生徒さんたちもまた参加してくれそうです」
イベントが終了した翌日の放課後。わたしは図書館の三階にやってくると、「ビブリティカ」の三人と一緒にイベントの後片付けをしていた。
わたしが各本棚に貼っていた問題文を剥がしている間、総玖くんたちは乱れていた棚を直して、参加者から回収した解答用紙の枚数を数えてくれたんだ。
今回のイベントが大成功だったことで、国下先生が「ぜひ今度の学校との会議でイベントについて紹介したい!」ということで、参加した生徒の人数やクイズの内容、全問正解した人の割合をまとめて提出することになった。
わたしはこのイベントの発案者ということで、詳細をまとめるように頼まれたんだよね。
こういったイベントの企画や報告のまとめ作業は初めてだったけれど、総玖くんや歴彦さん、心聖くんが手伝ってくれたおかげで、スムーズにできたんだ。
「おい、チビサク。この本はお前の分類だろう。こっちに入れるな」
「うるせぇ! チビって言うな! お前だってたいして身長変わらないだろう!」
「おれはお前よりはわずかに高いからいいんだよっ! 図書館のことに詳しい『0類』のくせに一番チビなんてな!」
「背は低くても知識は誰よりもあるからな! お前も難しい言葉や考えばかり言ってないで、もっと柔軟に周りを見ろ!」
本棚を整理していた心聖くんと総玖くんが一冊の本を手に喧嘩を始める。それを歴彦さんが「止めてください。おふたりとも!」と声を掛けてくれるが、それもすでに見慣れた光景だった。
「総玖くんと心聖くんは相変わらずですね……」
「おふたりともうれしいのです。文さんが図書館に人を呼ぶきっかけを作ってくれましたので」
実はあのイベントに参加した人たちの大半は、図書館に一度も来たことがなかった人たちだったみたいで、今回のイベントをきっかけに来てくれるようになったんだ。
そうは言っても、ほとんどの人はコワーキングスペースでの自習が目的で、本を借りてくれる人はまだまだ少ないけどね。
「今度はコワーキングスペースに、図書委員のみんなで何か本に関する紹介文や展示をできないか相談してみようと思うの。図書館のオススメの本とか、作家さんとかを紙にまとめて壁に貼れないかなって」
「おっ、いいな。最初は十司英蒔なんてどうだ? 身内しか知らない情報を載せたり、本人にインタビューとかしたりしてさ。娘なら簡単だろう?」
「もうパパを引き合いに出すのはやめて……!」
わたしが恥ずかしかっていると、そこに心聖くんが割り込んでくる。
「コワーキングスペースには勉強に来ているんだ。それなら勉強に役立ちそうなニーチェやソクラテス、ルソーあたりの格言や名言の方がいいだろう?」
「バーカ! 誰がそんな難しいものを読むんだよっ! それなら地元の偉人の方がずっと親しみがあっていいに決まっている!」
「総玖さんも心聖さんも……やれやれ……」
またしてもケンカが始まったふたりに歴彦さんは苦笑しつつ肩を落とす。
「でも『喧嘩するほど仲が良い』って言葉がありますから」
「あるじである文さんが気にならないのならいいのですが。これは早く他の『ビブリティカ』に目覚めてもらわなければ私の身が持たなさそうです……」
とほほ、といった様子で歴彦さんは片付けが終わった道具を入れた段ボールを持って降りてしまう。
歴彦さんたち「ビブリティカ」が見えない人からしたら、段ボールだけ宙に浮かんでいるように見えないか気になるけれど、今のところはわたしくらいしか図書館にいないからいいのかな。
心聖くんまで歴彦さんの手伝いに行ってしまうと、残っていた総玖くんと目が合ってしまう。
総玖くんの明るい金髪が揺れたかと思うと、さっきまで喧嘩していた顔に柔らかな笑顔が浮かぶ。



