その日の夜に家に帰ると、早速図書館から借りてきた本を自室の勉強机の上に並べる。それからパパから借りてきたノートパソコンも。
パパは家の外でも仕事をするからノートパソコンを持っているけど、故障が気になるみたいで予備機を含めて何台か持っているんだよね。
それで夕飯後に借りてきたのはその予備機の一台。小学生の時から何度か借りているから使い慣れていて問題なし。早速の電源を入れると、今度の図書委員会の集まりに間に合うように計画書を作っていくよ。
「えっと……イベントのタイトルはどうしよう……?」
歴彦さんが教えてくれた「図書館に人を呼ぶ案」というのは、図書館内でイベントを開催することだった。
それも昼休みに参加できるような手軽さがあって興味を持ってくれるようなもの。
そこで歴彦さんは「図書館を舞台にクイズやゲームを開催する」といった考えを教えてくれたのだった。
「分かりやすいように、『お宝さがし』でいいかな?」
「いいんじゃね。その方が本を読まない奴でも食いつきやすいだろうし」
そんな声が近くから聞こえてきて慌てて振り返ると、すぐ近くには首をこてんと傾けた総玖くんが不思議そうな顔で立っていたのだった。
「さっ、総玖くんっ!? なんでうちにいるのっ!?」
「そんなの……お前が借りた『0類』の本から出てきたに決まってんじゃん。歴彦に勧められて借りて帰っただろう」
そう言って、総玖くんはわたしのベッドに腰掛ける。友達でさえ自室に入れたことがないから、なんだか緊張するな……。
「たしかに歴彦さんに勧められて図書館の本を借りたけれども……でも『ビブリティカ』は図書館から出られないんじゃなかったの?」
「普通は出られない。けどあるじと契約した『ビブリティカ』に限っては、あるじの近くに姿を現せる。そのあるじが契約を交わした『ビブリティカ』と同じ分類の本を持っている時だけになるけどな」
わたしはパソコンの隣をチラリと見る。そこには歴彦さんに勧められて借りた様々な分類の本が置いてある。当然総玖くんの分類である「0類」の本も……。
「あんたは歴彦と契約してあるじになっただろう? それならあんたはもうあるじ候補じゃなくて、オレたちのあるじってことになる」
「でもわたしが契約をしたのは歴彦さんで総玖くんじゃないよ?」
「そんな細かいことは気にしなくていい。それよりその『お宝探し』だけだとフツーすぎだろう」
「勝手に見ないでよっ!」
まだイベントのタイトルしか書かれていないパソコン画面を必死に手で隠そうとしたけれども、総玖くんは「ちょっと貸せ」とだけ言って、いとも簡単にわたしからパソコンを奪ってしまう。
「こういうのは勢いとパンチが大事なんだよな〜」
そんなことを呟きながら総玖くんが修正したタイトルは「探せ!図書館お宝探しツアー! 一攫千金はすぐそこに!?」だった。
「一攫千金はちょっと堅苦しくないかな……?」
「いいや! この『一攫千金』っていうのは、中国の歴史書が元になっているんだ。『ひと掴みで千金を手に入れる』っていう意味からきているんだ。今回のイベントにピッタリだろう!」
「総玖くんは知ってるの? わたしたちが何をするつもりなのか……」
「……ああ。歴彦と話している姿を見ていた。契約を交わすところもバッチリな。心聖の奴も見てたと思うぜ。歴彦が誰かと契約を交わすなんて三十数年ぶりだからな」
三十年前ということはパパやママが学生の頃かな。
真面目で大人な歴彦さんの前のあるじはどんな人だったんだろう。やっぱり歴彦さんにそっくりの人なのかな。ちょっと気になる。
「歴彦も最初は昔みたいに図書館に人を集めようと、いくつものアイディアを考えてたんだ。ただ上野以降はあるじ候補が現れなくて実現できなかった。それをようやく実行できるっていうんだ。オレだって力を貸したくなるさ」
「総玖くんも図書館の取り壊しには反対なんだよね?」
「オレたち『ビブリティカ』はオレたち本を読む人間がいてこそ存在できる。本を読む人がいなくなった時、すなわち本そのものがこの世界から消える時まで、オレたちは自分たちの役割を果たすんだ。図書館はただ本を保管して貸出だけの場所じゃない。人と人のコミュニケーションの場所でもある」
たとえば図書館で定期的に開催されている子供向けの絵本の読み聞かせ会や地域文化の講演会といったイベントも、同世代や家庭環境が似ている人たちの出会いの場所にもなっている。
子供向けのイベントなら同じ年頃の子供を育てる母親同士、地域文化のイベントなら同じ地域に住む住民たちというように。
家族や職場、学校以外の「第三の居場所」となるように、人と人との出会いの橋渡しを担うのも図書館の役割なんだって。
パパは家の外でも仕事をするからノートパソコンを持っているけど、故障が気になるみたいで予備機を含めて何台か持っているんだよね。
それで夕飯後に借りてきたのはその予備機の一台。小学生の時から何度か借りているから使い慣れていて問題なし。早速の電源を入れると、今度の図書委員会の集まりに間に合うように計画書を作っていくよ。
「えっと……イベントのタイトルはどうしよう……?」
歴彦さんが教えてくれた「図書館に人を呼ぶ案」というのは、図書館内でイベントを開催することだった。
それも昼休みに参加できるような手軽さがあって興味を持ってくれるようなもの。
そこで歴彦さんは「図書館を舞台にクイズやゲームを開催する」といった考えを教えてくれたのだった。
「分かりやすいように、『お宝さがし』でいいかな?」
「いいんじゃね。その方が本を読まない奴でも食いつきやすいだろうし」
そんな声が近くから聞こえてきて慌てて振り返ると、すぐ近くには首をこてんと傾けた総玖くんが不思議そうな顔で立っていたのだった。
「さっ、総玖くんっ!? なんでうちにいるのっ!?」
「そんなの……お前が借りた『0類』の本から出てきたに決まってんじゃん。歴彦に勧められて借りて帰っただろう」
そう言って、総玖くんはわたしのベッドに腰掛ける。友達でさえ自室に入れたことがないから、なんだか緊張するな……。
「たしかに歴彦さんに勧められて図書館の本を借りたけれども……でも『ビブリティカ』は図書館から出られないんじゃなかったの?」
「普通は出られない。けどあるじと契約した『ビブリティカ』に限っては、あるじの近くに姿を現せる。そのあるじが契約を交わした『ビブリティカ』と同じ分類の本を持っている時だけになるけどな」
わたしはパソコンの隣をチラリと見る。そこには歴彦さんに勧められて借りた様々な分類の本が置いてある。当然総玖くんの分類である「0類」の本も……。
「あんたは歴彦と契約してあるじになっただろう? それならあんたはもうあるじ候補じゃなくて、オレたちのあるじってことになる」
「でもわたしが契約をしたのは歴彦さんで総玖くんじゃないよ?」
「そんな細かいことは気にしなくていい。それよりその『お宝探し』だけだとフツーすぎだろう」
「勝手に見ないでよっ!」
まだイベントのタイトルしか書かれていないパソコン画面を必死に手で隠そうとしたけれども、総玖くんは「ちょっと貸せ」とだけ言って、いとも簡単にわたしからパソコンを奪ってしまう。
「こういうのは勢いとパンチが大事なんだよな〜」
そんなことを呟きながら総玖くんが修正したタイトルは「探せ!図書館お宝探しツアー! 一攫千金はすぐそこに!?」だった。
「一攫千金はちょっと堅苦しくないかな……?」
「いいや! この『一攫千金』っていうのは、中国の歴史書が元になっているんだ。『ひと掴みで千金を手に入れる』っていう意味からきているんだ。今回のイベントにピッタリだろう!」
「総玖くんは知ってるの? わたしたちが何をするつもりなのか……」
「……ああ。歴彦と話している姿を見ていた。契約を交わすところもバッチリな。心聖の奴も見てたと思うぜ。歴彦が誰かと契約を交わすなんて三十数年ぶりだからな」
三十年前ということはパパやママが学生の頃かな。
真面目で大人な歴彦さんの前のあるじはどんな人だったんだろう。やっぱり歴彦さんにそっくりの人なのかな。ちょっと気になる。
「歴彦も最初は昔みたいに図書館に人を集めようと、いくつものアイディアを考えてたんだ。ただ上野以降はあるじ候補が現れなくて実現できなかった。それをようやく実行できるっていうんだ。オレだって力を貸したくなるさ」
「総玖くんも図書館の取り壊しには反対なんだよね?」
「オレたち『ビブリティカ』はオレたち本を読む人間がいてこそ存在できる。本を読む人がいなくなった時、すなわち本そのものがこの世界から消える時まで、オレたちは自分たちの役割を果たすんだ。図書館はただ本を保管して貸出だけの場所じゃない。人と人のコミュニケーションの場所でもある」
たとえば図書館で定期的に開催されている子供向けの絵本の読み聞かせ会や地域文化の講演会といったイベントも、同世代や家庭環境が似ている人たちの出会いの場所にもなっている。
子供向けのイベントなら同じ年頃の子供を育てる母親同士、地域文化のイベントなら同じ地域に住む住民たちというように。
家族や職場、学校以外の「第三の居場所」となるように、人と人との出会いの橋渡しを担うのも図書館の役割なんだって。



