「ここの図書館には盗難を防止するために全ての本に防犯用のタグがあるけれども、街や駅前にある誰でも利用できる公共の図書館はそうもいかない。何百万冊もの全ての本に防犯用のタグが付いているわけじゃないから、この本の貸出手続きができているかどうかが頼みの綱となる」
「図書館のどこにも無くて、誰も持ち出していない本は『紛失本』として処理される。図書委員のみんなで図書館の中を探して、それでも見つからなければ『除籍』といって、本の情報を削除するのよ」
温品先輩に続いて、田部先輩も頷く。
「勝手に図書館の本を処分できないからな。何人もの図書委員で、本棚のあちこちを探して、時には本棚の本を全て棚から出して探す。小さい本なら大きい本の間に挟まっていることもあるし、本棚の下や裏から見つかることもあるからな」
「そういえば、去年の蔵書点検の時に見つからなかった小さな文庫の本は、年末の大掃除の時に閲覧用の机の下から見つかったよね。きっと誰かが閲覧用の机で読んで、その下にあった荷物置きに本を仕舞ったまま忘れられたんだと思う」
それぞれの閲覧用の机の下には荷物が置けるように小さな棚が備え付けられている。ノートや筆入れといった文房具や小物を置けるようになっているんだけど、その本を読んでいた人は本をそこに置いたのを忘れて帰っちゃたんだろうね。
「文庫本って小さい本のことでしたっけ?」
「そうだよ。誰でも手軽に読書ができるように小さいサイズにして、値段もお手軽な価格にしている本が文庫本。同じ小さいサイズ本でも実際にあった出来事や社会の出来事について書かれているノンフィクションや、政治や文学、理系といった勉強系に特化した教養的な本の入り口として読まれている本が新書本ってね」
「子供向けの物語本も新書本と同じサイズだよ。私も朝読書の時間は子供向けの物語本をよく読むの。難しい本を読むと眠くなっちゃって」
恥ずかしいのか「あはははは……」と温品先輩が苦笑いをする。隣で腕組みをする田名先輩も頷いているので同じなんだろうな。
「温品さんが言っている難しい本っていうのは、サイズが大きくて難しい大人向けの本っていうのは単行本っていうんだ。単行本といっても、小説から勉強に関する本まで様々だから、まずは文庫本や新書本に慣れて、そこから簡単な内容の単行本から始めていくのも良いと思うよ。スキーに例えるとしたら、スキー初心者がプロ向けの上級者コースで滑るようなものだからね」
「ちなみに中学生が絵本を読むのはおかしいことですか? 読書が苦手な子がいるんですが、朝読書の時間に読める簡単な本が無いって困っているようだったので……」
本当はわたしのことなんだけど、今更読書が苦手なんて言えなくて遠回しに聞いてみる。上野さんは如何にも簡単そうに「全然おかしくないよ」と返してくれたのだった。
「最近は大人向けの絵本もあるからね。大人が子供と読める絵本、大人になると意味が変わってくる絵本、大人が読んで泣ける絵本も増えてきているよ。『絵本は子供が読むもの』なんて思い込みを変えようと、絵本を売る書店も、その絵本を発売する出版社も、絵本を描く作家でさえ、みんな必死なんだ。特に最近は紙の本が減ってきたからね。何十年先も読まれるために工夫を凝らしているんだ」
「なるほど……」
そんな話を上野さんや先輩たちとしている間に、次々と他のクラスの図書委員たちもコワーキングスペースに集まってくる。
永都学園の中等部は各学年に三クラスずつある。各クラスから二人ずつ図書委員が来るから、図書委員は全員で九人になる。わたしと同じクラスの図書委員は休みだから、今日は八人がコワーキングスペースに集合したことになる。
そこに加えて大学部の図書館からお手伝いに来てくれた上野さんと、図書委員の顧問を担当する国下先生。各委員会には必ず先生が一人付き添うことになっているけど、まさか図書委員が国下先生だったなんて……。
ちなみに国下先生は上野さんと同じ大学を卒業していて、上野さんは後輩に当たるんだって。どうりでわたしのパパのことが筒抜けだったわけだ。
上野さんも最初に「国下先輩から聞いた」って言っていたもんね。
国下先生は図書委員が全員集まると、「全員注目」と言って話し始めたのだった。
「図書館のどこにも無くて、誰も持ち出していない本は『紛失本』として処理される。図書委員のみんなで図書館の中を探して、それでも見つからなければ『除籍』といって、本の情報を削除するのよ」
温品先輩に続いて、田部先輩も頷く。
「勝手に図書館の本を処分できないからな。何人もの図書委員で、本棚のあちこちを探して、時には本棚の本を全て棚から出して探す。小さい本なら大きい本の間に挟まっていることもあるし、本棚の下や裏から見つかることもあるからな」
「そういえば、去年の蔵書点検の時に見つからなかった小さな文庫の本は、年末の大掃除の時に閲覧用の机の下から見つかったよね。きっと誰かが閲覧用の机で読んで、その下にあった荷物置きに本を仕舞ったまま忘れられたんだと思う」
それぞれの閲覧用の机の下には荷物が置けるように小さな棚が備え付けられている。ノートや筆入れといった文房具や小物を置けるようになっているんだけど、その本を読んでいた人は本をそこに置いたのを忘れて帰っちゃたんだろうね。
「文庫本って小さい本のことでしたっけ?」
「そうだよ。誰でも手軽に読書ができるように小さいサイズにして、値段もお手軽な価格にしている本が文庫本。同じ小さいサイズ本でも実際にあった出来事や社会の出来事について書かれているノンフィクションや、政治や文学、理系といった勉強系に特化した教養的な本の入り口として読まれている本が新書本ってね」
「子供向けの物語本も新書本と同じサイズだよ。私も朝読書の時間は子供向けの物語本をよく読むの。難しい本を読むと眠くなっちゃって」
恥ずかしいのか「あはははは……」と温品先輩が苦笑いをする。隣で腕組みをする田名先輩も頷いているので同じなんだろうな。
「温品さんが言っている難しい本っていうのは、サイズが大きくて難しい大人向けの本っていうのは単行本っていうんだ。単行本といっても、小説から勉強に関する本まで様々だから、まずは文庫本や新書本に慣れて、そこから簡単な内容の単行本から始めていくのも良いと思うよ。スキーに例えるとしたら、スキー初心者がプロ向けの上級者コースで滑るようなものだからね」
「ちなみに中学生が絵本を読むのはおかしいことですか? 読書が苦手な子がいるんですが、朝読書の時間に読める簡単な本が無いって困っているようだったので……」
本当はわたしのことなんだけど、今更読書が苦手なんて言えなくて遠回しに聞いてみる。上野さんは如何にも簡単そうに「全然おかしくないよ」と返してくれたのだった。
「最近は大人向けの絵本もあるからね。大人が子供と読める絵本、大人になると意味が変わってくる絵本、大人が読んで泣ける絵本も増えてきているよ。『絵本は子供が読むもの』なんて思い込みを変えようと、絵本を売る書店も、その絵本を発売する出版社も、絵本を描く作家でさえ、みんな必死なんだ。特に最近は紙の本が減ってきたからね。何十年先も読まれるために工夫を凝らしているんだ」
「なるほど……」
そんな話を上野さんや先輩たちとしている間に、次々と他のクラスの図書委員たちもコワーキングスペースに集まってくる。
永都学園の中等部は各学年に三クラスずつある。各クラスから二人ずつ図書委員が来るから、図書委員は全員で九人になる。わたしと同じクラスの図書委員は休みだから、今日は八人がコワーキングスペースに集合したことになる。
そこに加えて大学部の図書館からお手伝いに来てくれた上野さんと、図書委員の顧問を担当する国下先生。各委員会には必ず先生が一人付き添うことになっているけど、まさか図書委員が国下先生だったなんて……。
ちなみに国下先生は上野さんと同じ大学を卒業していて、上野さんは後輩に当たるんだって。どうりでわたしのパパのことが筒抜けだったわけだ。
上野さんも最初に「国下先輩から聞いた」って言っていたもんね。
国下先生は図書委員が全員集まると、「全員注目」と言って話し始めたのだった。



