そうしているうちに、年老いた前常陸の介は病気がちになった。空蝉の君の将来だけを心配して、息子たちに何度も言い聞かせる。
「継母だからといって軽んじてはならない。何もかもあの人のおっしゃるとおりにいたせ。私が生きていたときと同じように大切にお仕えするのだ」
空蝉の君は嘆いた。
<なんと不運な人生だろう。両親を早く亡くしたために入内の予定は流れ、年老いた地方長官の後妻などになってしまった。しかもその夫にさえ置いていかれようとしている。私はこの先どうなってしまうのか>
介はその様子を見て、
<寿命はどうしようもないが、私の魂だけでもこの人の近くに残しておきたい。息子たちは今は神妙な顔をしているが、本心はあてにならない>
と悲しむけれど、ついに亡くなってしまった。
息子たちはしばらく遺言を守っていたけれど、しだいに継母に冷たくなる。
<継子とはこういうものだ>
空蝉の君はただ自分の不運を嘆いて暮らしていた。
そんな息子たちのなかにひとりだけ優しい態度をとる人がいた。あわよくば継母を自分のものにしたいと思っているらしい。
「父君があれほどあなたを心配なさっていたのです。たいした身分でもない私ですが、どうぞうっとうしがらず何でもおっしゃってください」
親切そうな顔で近づいてきたかと思えば、下心が見え隠れする。
空蝉の君はもううんざりだった。
<どこまで呪われた運命なのだ。生きつづけていると、こんな嫌な思いまでしなくてはならないのか>
絶望して誰にも相談せず尼になってしまった。何もそこまでなさらなくてもと女房たちは嘆く。最大の原因となった息子は、
「私への当てつけか。まだお若いというのに、これからどうやって暮らしていくおつもりなのだろう」
と嫌味を言っていた。器の小さい男だこと。
「継母だからといって軽んじてはならない。何もかもあの人のおっしゃるとおりにいたせ。私が生きていたときと同じように大切にお仕えするのだ」
空蝉の君は嘆いた。
<なんと不運な人生だろう。両親を早く亡くしたために入内の予定は流れ、年老いた地方長官の後妻などになってしまった。しかもその夫にさえ置いていかれようとしている。私はこの先どうなってしまうのか>
介はその様子を見て、
<寿命はどうしようもないが、私の魂だけでもこの人の近くに残しておきたい。息子たちは今は神妙な顔をしているが、本心はあてにならない>
と悲しむけれど、ついに亡くなってしまった。
息子たちはしばらく遺言を守っていたけれど、しだいに継母に冷たくなる。
<継子とはこういうものだ>
空蝉の君はただ自分の不運を嘆いて暮らしていた。
そんな息子たちのなかにひとりだけ優しい態度をとる人がいた。あわよくば継母を自分のものにしたいと思っているらしい。
「父君があれほどあなたを心配なさっていたのです。たいした身分でもない私ですが、どうぞうっとうしがらず何でもおっしゃってください」
親切そうな顔で近づいてきたかと思えば、下心が見え隠れする。
空蝉の君はもううんざりだった。
<どこまで呪われた運命なのだ。生きつづけていると、こんな嫌な思いまでしなくてはならないのか>
絶望して誰にも相談せず尼になってしまった。何もそこまでなさらなくてもと女房たちは嘆く。最大の原因となった息子は、
「私への当てつけか。まだお若いというのに、これからどうやって暮らしていくおつもりなのだろう」
と嫌味を言っていた。器の小さい男だこと。



