帝が位からお下りになる日が近づく。朧月夜の尚侍が心細そうになさっているのを、帝はかわいそうにお思いになる。
「あなたは父大臣を亡くし、姉皇太后もご病気で、その上まもなく私まで死んでしまったら、さぞかし不安定な立場におなりだろうね。ずっと源氏の君に夢中で私を軽んじてきたあなただけれど、それでも私は、あなたのことだけが心配なのだよ。
私が死んだら源氏の君と結婚なさるのかな。しかし断言できるが、源氏の君が私以上にあなたを愛することはない。そのような人の胸に飛びこんでいくあなたが気の毒だ」
泣きながらお恨みになるので、尚侍はお顔を赤くして涙をこぼされる。あふれるほどの愛らしさに、帝は女君の過ちなどどうでもよくなってしまわれる。ただただ愛しい。
「せめて皇子を生んでくれていたらよかったのに。源氏の君の子はすぐにお生みになるのだろうね。悔しいことだ。あなたにとっては最愛の人の子だろうが、しょせんはただの貴族の子ですよ。その子は何をどうしたって東宮になれない。私の皇子だったら、それが可能だったのに」
将来のことまで具体的にお話しになる。尚侍は恥ずかしくも悲しくもなってしまわれる。
帝はどこまでもお優しい。尚侍へのご愛情は年月とともに深くなるばかりだった。一方源氏の君は、たしかにご立派だけれど一途ではいらっしゃらない。尚侍にもやっとそれがお分かりになってきた。
<源氏の君との恋は若気のいたりだった。入内が決まっていたのに軽率に関係を持ってしまって、たいへんな騒ぎを起こしたのだ。私自身だけでなく源氏の君のご将来も傷つけた。何もかも私が浅はかだったせいだ>
思い出すとご自分が嫌になってしまう。
「あなたは父大臣を亡くし、姉皇太后もご病気で、その上まもなく私まで死んでしまったら、さぞかし不安定な立場におなりだろうね。ずっと源氏の君に夢中で私を軽んじてきたあなただけれど、それでも私は、あなたのことだけが心配なのだよ。
私が死んだら源氏の君と結婚なさるのかな。しかし断言できるが、源氏の君が私以上にあなたを愛することはない。そのような人の胸に飛びこんでいくあなたが気の毒だ」
泣きながらお恨みになるので、尚侍はお顔を赤くして涙をこぼされる。あふれるほどの愛らしさに、帝は女君の過ちなどどうでもよくなってしまわれる。ただただ愛しい。
「せめて皇子を生んでくれていたらよかったのに。源氏の君の子はすぐにお生みになるのだろうね。悔しいことだ。あなたにとっては最愛の人の子だろうが、しょせんはただの貴族の子ですよ。その子は何をどうしたって東宮になれない。私の皇子だったら、それが可能だったのに」
将来のことまで具体的にお話しになる。尚侍は恥ずかしくも悲しくもなってしまわれる。
帝はどこまでもお優しい。尚侍へのご愛情は年月とともに深くなるばかりだった。一方源氏の君は、たしかにご立派だけれど一途ではいらっしゃらない。尚侍にもやっとそれがお分かりになってきた。
<源氏の君との恋は若気のいたりだった。入内が決まっていたのに軽率に関係を持ってしまって、たいへんな騒ぎを起こしたのだ。私自身だけでなく源氏の君のご将来も傷つけた。何もかも私が浅はかだったせいだ>
思い出すとご自分が嫌になってしまう。



