トラブルメーカー・ストラテジー

たったったったったっ

コンクリートに、そんな音が響く。

学校付近の坂道は、なかなかに急で。

とてもじゃないけれど、走れたものじゃない。なんなら普通に歩いてもキツイから、速足ぐらいがちょうどいい。

なんの変哲もない、いつもの通学路。

ちょうど坂道を越えたところで、私は自分の足音とは違う足音があることに気付く。

ここの道は険しいから、いつも使う人いないのに………。

私以外に使ってる人いたんだ、と何気なく思っていると。



―――フェンスの上から、人が降ってきた。

私と同じ制服を身にまとった、とある少年が。



…………………………は。

少年は私に気付かず、颯爽と去っていった。

ふと、さっきの足音は少年の足音だったんだと気付く。

はん、さてはアレか、少年?

坂道を通りたくないからショトカして来たってか?

最近、つくづく思う。

………若い輩はやることが違うね、やっぱ。

颯爽と去っていった少年の背を眺めながら、

……………やるな、少年。

私は心の中で少年を称えた。

◇◇◇

「―――は―――」

「ですが―――、―――」

「それでは―――」

「―――、しかし―――」

あらま、お取込み中かしら。

下駄箱に立っていると、職員室から先生たちの会議(?)が聞こえてきた。

なんとなーく重い雰囲気。

特に用はなかったけど、なんか気になったので職員室にいた先生たちに話しかけてみた。

「よっす、せんせー。なんかあったん?」

「あ、鬼頭! ちょうどよかった、ちょっといいか?」

急に名前を呼ばれてびっくり。

あれ?

「会議してんだから静かにしろ!」とかじゃないの?

え、もしや思った以上に深刻な感じ?

「え、なにー? 私、なんかやらかしたっけ?」

なんかやった覚えはないけど、一応尋ねてみる。

「いや、そういうことじゃなくてだな………」

「じゃ、なにー? なんか頼み事とかー?」

「あぁ」

「え、マジ⁉」

いや、冗談のつもりだったんですけど。

まさかホントに頼み事とか思わんじゃん。

「うちの学校に(さざなみ)っているだろ?」

いや誰やねん。

「たぶん屋上にいるから、ちょっと話してみてくれないか? 自由にしてていいから」

「えぇ~………?」

あぁ、やらかした………。

どこぞの馬の骨かも知らんヤツの相手ほど無駄なことはない。

すこぶる面倒なことを押し付けられた。

誰だよ、先生に声かけたの。いやテメェだよ。

私のバカ〜〜〜〜〜!!

私は心の中で、過去の自分を責めまくった。

◇◇◇

たん、たん、たん、たん、たん

私は現在、重い足取りで屋上に向かっている。

つーか誰だよ、(さざなみ)とかいうヤツ。

有名人か? うん? 知らんぞ?

「はあぁあぁぁぁあああぁぁあああぁあ………」

ものすごーく深いため息をついてから、私は屋上のドアを開けた。

「あ゙?」

そんな声がして、顔を上げると、そこにいたのは。

「あ―――!!」

今朝の颯爽フェンス少年ではないか。

「少年―――!!!!!」

「あぁ?」

「キミあれでしょ⁉ 颯爽フェンス少年!!」

「そのクソダサネーミングやめろ」

「キミ、漣っていうんだぁ。よろしくねっ」

「勝手に話を進めんな」

“ああ言えばこう言う”とは、まさにこのこと。

しかし、そんなことでへこたれる私ではない!!

むしろ俄然やる気出てきた~~~~~!!!

「私、鬼頭雷羽(きとうらいは)っていうの! キミは漣―――何くん?」

「アンタに教える義理はない」

「くぅ~~~!! なかなかにカッコいいこと言ってくれるじゃん、少年よ⁉」

「黙れ」

およ?

それだけ吐き捨ててから、屋上から去っていこうとする少年。

待て待て待て待て⁉ まだ話は終わってないぞ⁉

「ちょい待ち!」

バッ、という勢いで少年の前に立ちはだかり、両手を広げて逃げ道を塞ぐ。

「ここを通りたければ………私を倒してから行けぃ!!」

「病院行け」

はい!

ものすっごくキレのあるツッコミ、いただきましたぁ!!

私が心の中で喝を入れていると、キィ、とドアが開く音がした。

ま、まさか………。

チラリと横目で盗み見ると。

はい、予想的中!

少年が屋上を出ていこうとしているではありませんか!!

「しょうねーーー」

バタンッ

私が言い終える前に、勢いよくドアが閉まった。

そこに、少年の姿はない。

そりゃそうか、と心の中で思った。

少年は屋上から出ていってしまったのだ。

私は落ち込まず元気にならず、

「やったるわ………」

ただただ口角を上げ、そう呟いた。

………………………

勝負01:会話
作戦名:仲良くなろうぜ大作戦
勝者:?
敗者:?
親交度:−100