野いちご源氏物語 一二 須磨(すま)

「今日は悩み事をお(はら)いするのにふさわしい日でございますよ」
 家来が物知りぶってお(すす)めする。海も見たくなったので、源氏(げんじ)(きみ)儀式(ぎしき)を行うことになさった。
 浜辺に粗末な会場をつくり、陰陽師(おんみょうじ)にお祈りをおさせになる。それから小舟(こぶね)に大きな人形(ひとがた)を乗せて海へ流した。人形と一緒に悩み事を消し去るというおまじないだった。
<どこへ流れていくのだろう。心細そうな姿が私のようだ>
 屋外(おくがい)の明るいところにお座りになっている源氏の君は、たとえようもなくお美しい。