嘘つきと疫病神

 それでも、残酷な世界はいつだって私達を痛めつけようと血眼になる。
 けれど運命というものは確かにあるのだ。一度離れ離れになってしまったけれど、貴方はまた戻ってきてくれた。
 
 私の知らない遠くの世界に貴方が行ってしまう前に交わした約束。
 
「絶対に帰ってくるから。またこの町に、君がいるこの町に帰るから」

 その言葉を信じてひたすらに、がむしゃらに生きた。
 辛いこと、嫌なことを我慢して、言われたことには素直に従って。誰かの役に立つために駆け回った。

 いつか貴方が戻って来る日、また笑ってくれると信じて。

 けれどやっぱり現実というものは残酷で、一度感じた喜びをいとも簡単に打ち壊していく。
 痛いと声を上げることも、嫌だと泣いて縋ることも世界は許してはくれなかった。
 
 何故世界は人を殺してまで膨大な敷地を、資源を欲するのだろう。
 何故世界は武器を握って殺し合いをするのだろう。
 何故その戦場に貴方が行かなければならなかったのだろう。

 何故戦争は存在するのだろう。

 誰しも生まれながらに命という財産を与えられて、生きる権利を持っている。そのはずなのに人間は欲に忠実に、その美しき財産を見落としてまで目の前にあるモノを欲する。
 その行動が、考えが、どれだけ愚かであるか人間は気づかない。気付けないからこそ戦争という醜き争いを生み出してしまった。

 ただ共に生きて、共に老いて、共にいたいと願っただけ。全ての人が持つべき想いを抱いただけなのに、まるでその願いを踏み躙るかの如く世界は地獄を見せる。

『地獄』幸せだと感じた世界は地獄へと変わってしまった。
 そしてその地獄を、紛れもない私を含めた人間が愚かにも生み出してしまった。

 こんなことおかしい、世界は間違っていると声を上げれば誰かが立ち止まってくれただろうか。
 私が強く貴方への想いを声にして伝えていれば、立ち止まって考え直してくれただろうか。

 会いたいと思っていたはずなのに、どうして出会わなければよかったと思っているのだろう。