いじわる吸血鬼と、とびきり甘い“花嫁契約”。

 ちゅんちゅん、という鳥の鳴き声で私は目を覚ました。

 真っ先に目に飛び込んでくるのは、自宅とは違うおしゃれな部屋。

 そうだ……昨日から寮生活が始まったんだった……。



『みーこ、俺の花嫁になって?』

『じゃあ――信じてもらえるまで、何回でも言うから』



 突然、クロさんに言われた言葉が脳内でフラッシュバックする。

 クロさんが、私のことを、好き……。

 考えるだけで、ぼっ、と顔が熱くなった。

 けど、やっぱりなんで私のことを好きになったんだろう……。数分しか話してないのに……。

 そのまま寝起きの働かない頭を回転させる。

 ……うん、考え出したらキリがない。

 とりあえず、今日は学校生活だけに集中しよう……!

 そう思いながら、私は寮のドアを開けた。



▷▷▷



 私は今、1−Ⅰの教室の前に立っている。

 うぅ……緊張する……。

 友達、ちゃんとできるかな……っ。

 すー、はー、すー、はー、とゆっくり深呼吸する。

 よし、行くぞ……!

「おひゃようごがいます……っ」

 噛んだ。それはもう盛大に。

 クラスメイトの視線が一斉に私に集まる。

 スタートダッシュは大失敗。

 あぁ……穴があったら埋まりたい……。

 私は恥ずかしさで真っ赤になりながら、自分の席に向かった。



「ねぇ、あの子誰……?」

「え、めっちゃ可愛い……」

「誰か声かけて来いよ」

「美少女すぎるって……」



 なんか、ひそひそ言われてる感じがする……。

 もしかして、さっき噛んだこと……?

 変な人だと思われたかな……。

 友達、ちゃんと作れるかな……。

 落ち込んで、少し俯く。

「ねぇねぇっ」

 隣から陽気な声がして、顔を上げると

「名前なんてゆーのー?」

 明るい茶髪に、深い焦げ茶色の瞳の男の子。

「えと、花影美衣子(はなかげみいこ)……です」

 突然のことに困惑しつつ、名前を答える。

「美衣子……みいって呼んでいい?」

 えっ……‼ あだ名で呼んでくれるの⁉

 嬉しさが込み上げてきて、思わず笑みが溢れる。

「オレは武矢涙(たけやるい)。気軽に涙って呼んでー」

「うんっ。よろしくね、涙!」

 涙はまた、ふはっと笑って「よろしく」と言ってくれた。

 優しい人が隣でよかった……。

 他のみんなとも仲良くなりたいな……。

 ……よし、私も勇気出さなきゃ……!

 隣とはもう友達になったから、通路を挟んで隣の人に声をかけてみた。

「はじめまして、私っ花影美衣子(はなかげみいこ)っていいますっ。よろしくお願いしますっ!」

 まずは自己紹介してみたけど……無難すぎたかな?

 不安になって、チラリとその人を見上げると

「あ、俺?」

 すぐ目に入ったのは、銀色に輝く無数のピアス。

 目にかかるくらいのストレートなセンターパート。

 カラスを思わせる黒髪は、LEDに照らされ、輝きを放っている。