「何かご用でしょうか?」
早速本題に入る藤也に、父は飲んでいた茶を置き珍しく笑みを見せる。
「明日はついに琴子の【離縁の儀】だからな。その後の行動を含め一度確認しておこうと思ったのだ」
そう話し出す父は本当に機嫌が良いようで、いつも以上に口数が多い。
琴子は藤也の存在により少々具合を悪くしながら、確認も兼ねてその話を無言で聞いた。
「まず、明日琴子は守護鬼である朱縁様にまみえ、かの方の妖力が込められた数珠をお返しする。それで離縁は成り立つ」
婚姻も数珠を付けるだけというアッサリしたものだったが、離縁もそれを返すだけで済むとは情緒もなにもない。
(まあ、一度もお会いしたことのない方ですしそんなものよね)
会うこともない花嫁を何故求めるのか疑問はあれど、長くそのように儀式を行ってきたので問題はないだろう。
「そして次の鬼花のために朱縁様はまた数珠に妖力を込められる。それを共に行く藤也が受け取るのだ。藤也の娘が次の鬼花となるのだからな」
「……はい」
何か思うところがあるのか、藤也が返事をするまでには少々間があった。
だが、ほとんど会うこともない兄がなにを思っているのかなど琴子に分かるわけもない。
父も、上機嫌だからなのか息子の間を置いた返事を気にすることはなかった。
「琴子はそのまま桐矢の迎えの者と桐矢家に向かうのだ」
「……はい」
前々から言われていたことなのですでに了承しているが、改めて聞くと本当に別れを惜しもうという気持ちはないのだなと思う。
(まあ、私も惜しむほどの愛着はないのだけれど)
そう淡泊に思ってしまう自分に、琴子は少々悲しく思ったのだった。
早速本題に入る藤也に、父は飲んでいた茶を置き珍しく笑みを見せる。
「明日はついに琴子の【離縁の儀】だからな。その後の行動を含め一度確認しておこうと思ったのだ」
そう話し出す父は本当に機嫌が良いようで、いつも以上に口数が多い。
琴子は藤也の存在により少々具合を悪くしながら、確認も兼ねてその話を無言で聞いた。
「まず、明日琴子は守護鬼である朱縁様にまみえ、かの方の妖力が込められた数珠をお返しする。それで離縁は成り立つ」
婚姻も数珠を付けるだけというアッサリしたものだったが、離縁もそれを返すだけで済むとは情緒もなにもない。
(まあ、一度もお会いしたことのない方ですしそんなものよね)
会うこともない花嫁を何故求めるのか疑問はあれど、長くそのように儀式を行ってきたので問題はないだろう。
「そして次の鬼花のために朱縁様はまた数珠に妖力を込められる。それを共に行く藤也が受け取るのだ。藤也の娘が次の鬼花となるのだからな」
「……はい」
何か思うところがあるのか、藤也が返事をするまでには少々間があった。
だが、ほとんど会うこともない兄がなにを思っているのかなど琴子に分かるわけもない。
父も、上機嫌だからなのか息子の間を置いた返事を気にすることはなかった。
「琴子はそのまま桐矢の迎えの者と桐矢家に向かうのだ」
「……はい」
前々から言われていたことなのですでに了承しているが、改めて聞くと本当に別れを惜しもうという気持ちはないのだなと思う。
(まあ、私も惜しむほどの愛着はないのだけれど)
そう淡泊に思ってしまう自分に、琴子は少々悲しく思ったのだった。



