帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

「まだ、あなた様と長い時を生きる覚悟は持てないのです。だから、いつかどうしても離縁したいと言い出すかもしれません。それでも、お側にいてもよろしいですか?」

 それならば今のうちから側にはいないで欲しいと言われてしまったらどうしようかと僅かに震えてしまう。
 朱縁が自分のことを強く求め手放すことはないだろうと分かっていても、不安になった。

「……琴子」

 震える手に、朱縁の大きく硬い手が被さる。優しく包み込むように握られた。

「側にいてくれるという琴子を私が拒否するわけがないだろう? それに、離縁したいと言いたくならないように私が琴子を愛し慈しめば良いだけだ」
「朱縁様……」
「だから側にいてくれ。私が望むのは、琴子だけなのだから」

 真綿に包むような優しい抱擁と、甘くとろける洋菓子のような囁きにただただ幸福を感じる。
 朱縁への思いが、長き時を共に生きることを許容出来るほどに大きなものなのかは分からない。
 でも、朱縁の側にいてもっと彼のことを知りたい。
 答えは、その後でも良いのでは無いだろうか。


 心穏やかな、安らぎをくれる朱縁の腕の中で、琴子はそう思った。

 了