帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

「これは……」
「そ、その……手慰みに刺していたのですが……こっ、今後は……妻として刺す機会もあるかもしれませんしっ」

 言葉にしながらどんどん顔に熱が集まっていく。
 自分の口から朱縁の妻だという言葉を発したのが初めてでもあるため、純粋に気恥ずかしい。
 朱縁はどういう反応をするだろうかと思いチラリと見上げると、無表情で固まってしまっていた。
 美しい造形の顔が微動だにしない様は、まるで彫像のようにも思えて不安になる。

「あの……朱縁様?」
「っ! 琴子!」

 呼び掛けると、途端に動き出しギュッと抱き締められた。

「きゃっ、しゅ、朱縁様!?」
「なんと可愛らしい……いや、それよりもその言葉。私の妻でいてくれると受け取っても良いのだな?」

 力強い抱擁の中で聞かれた言葉に、琴子は照れながらもコクリと頷いた。
 だが、まだ不安がないわけではない。
 そのまま顔を上げ、申し訳なさそうに朱縁に告げた。

「私は、朱縁様に惹かれております。ですがそれは同情しているだけかもしれませんし、美しいあなたに魅了されているだけかもしれません。でも……お側にいたいと思うのです」

 朱縁と同じ思いを返せないことに罪悪感が沸く。
 でも、彼に惹かれているのは確かで、朱縁の側を離れたくないと思うのも確かな想いだった。
 琴子は朱縁の山吹茶色の羽織をきゅっと掴み、正直な気持ちを伝える。