帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

「鬼のもくろみなぞ知ったことか。櫻井の娘は異能持ちの家に嫁ぎ強い異能持ちを産み育てることが勤め。その勤め以上に大事なことなど無い」
「なっ……」

 あくまでも人が作り出したお役目が大事だと口にする父に、琴子は絶句する。
 そのお役目は朱縁が妖力を分け与えているからこそ成立するものだと分かっているのだろうか?
 その朱縁の望みを『知ったことか』などと口にするなど、理解に苦しむ。

「何にせよ、あなたは私の妻になるのだ。それを覆すことは許されぬ」

 父の背後から、軍服を身に纏うたくましい体つきの男が現れる。
 父以外の異性の存在に気分が悪くなった琴子は思わず眉を寄せた。

「お前の婚約者、桐矢(きりや)真継(まさつぐ)殿だ。若君自ら迎えに来て下さったのだぞ? 行けぬとは言うまい?」
「む、無理です。この数珠が外せない以上、お父様以外の殿方の側にはいられません」

 未だ右手首にある紅玉の数珠を見せながら訴えると、真継がスラリと帯剣していた軍刀を抜く。
 何をするのかと思った瞬間、その刃が琴子へと振り下ろされた。

 ***

 少し時は遡り、朱縁は皇居にて帝に拝謁していた。
 とは言っても仰々しいものではなく、客間にて共に紅茶を飲み話をしているだけだ。