帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

「ではそちらの方は桐矢の?」

 千歳は戸惑い気味に朱縁へと視線を向けた。
 桐矢の? と聞きながらも違うと分かっているのだろう。
 人の身で銀髪赤眼など見たことは無いだろうから。

「あ、いえ、こちらの方は……」
「失礼、元婚約者殿と間違われたくはないな。私は琴子の夫の朱縁という。……守護鬼と言った方が分かるだろうか」

 どう説明すれば、と言葉を選んでいるうちに朱縁は中折れ帽を軽く上げて自ら挨拶をした。
 少々声が低く聞こえたのは、怒っているのだろうか。
 その怒りを僅かでも感じた様子の千歳は言葉を詰まらせる。
 千歳の婚約者らしい男性が、彼女を守ように引き寄せた。

「琴子は私の妻だ。今後間違えないでいただきたい」

 釘を刺すような言葉を残すと、朱縁は琴子の手を取り足早にその場を立ち去る。
 何か言わなくてはと思い琴子は顔だけ振り向くが、呆然とした千歳が「どういうこと?」と呟くのが見えただけだった。

 ***

 手を引かれ、走るようについて行く琴子。
 革靴であるため下駄などよりは走りやすいが、朱縁の歩幅について行こうと思うと息が切れた。

「しゅ、朱縁、様っ」
「あ……すまない」

 屋敷にも近くなり、そろそろ走るのが辛くなってきた琴子に朱縁はハッとし足を止める。
 止まれたことにホッとし、呼吸を整えていると朱縁の腕が琴子を抱き締めた。