帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

「それは私が側にいるからだ。他の誰でも無い私が近くにいるのだ。他の男を警戒する必要も無いだろう?」
「ということは、朱縁様と共にならばどこへでも行けるということでしょうか?」
「そういうことになるな」

 頷く朱縁に琴子は喜びが沸くのを抑えられなかった。
 今まで好きなように外出することもままならなかったのだ。
 朱縁が共にという制約はあれど、好きな場所にも行けるというのは心躍った。
 だが、ふと冷静になる。

(でもそれって、朱縁様と離縁出来れば済む話では無いかしら?)

 やはり離縁を目指した方が良いかもしれない、と考え始めたとき。

「……あら? もしかして、琴子さん?」
「え? あ、千歳さん?」

 聞き覚えのある声に顔を上げると、そこには三日ぶりに会う友の姿があった。
 いつものラジオ巻きに流行りの柄の着物という華やかな格好の千歳は、おそらく婚約者なのだろう、見知らぬ殿方と共にいた。

「まあ、華やかな格好をしていたから一瞬気付かなかったわ。琴子さん、そのような装いもお似合いですのね」
「あ、ありがとう」

 ニコニコと花開くような笑みを向けられ琴子は照れながらも礼を口にした。
 本日の装いは夢二柄の椿の着物で、髪も利津の手で外巻きという流行りの髪型にして貰っている。
 女学校時代は厳しい父の目もあり出来なかった装いだ。
 褒められて素直に嬉しい。