帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

(嫌われる作戦は失敗ね……朱縁様ったらずっと嬉しそうに微笑むばかりなんですもの。こんなにはしゃいでいる姿を見れば普通は呆れるくらいはするでしょうに)

 これでは嫌われることなど到底出来るわけがない。
 元々嫌われるような行動というのもよく分からなかった琴子は、嫌われる作戦自体を諦めた。

「あまり悩むのなら、私が決めてもいいだろうか?」
「え? あ、はい」
「桔梗の髪飾りも似合ってはいるが、琴子は赤の方が似合うのではないか?」

 そう言って赤い色を中心に巾着などの小物を決めてくれる朱縁。
 これはどうだ? と聞かれたことに答えながら、琴子は本日の朱縁の装いを改めて見た。
 黒いインパネスに、同じく黒の中折れ帽。右手には象牙の持ち手のステッキを持つという洋装だ。
 サラリと揺れる銀髪が映えて、琴子は素直に格好良いと見とれてしまう。

「あとは……この山茶花(さざんか)の髪飾りを購入しよう」

 朱縁は鮮やかな赤い山茶花の髪飾りを手に取り、琴子の髪に合わせると似た色の瞳を優しく細める。

「ああ、やはり赤が似合う。……私の目の色と同じ赤が」
「っ! そ、そういうおつもりだったのですか!?」

 先ほどから赤を推していると思っていたが、朱縁は自分の色を琴子に身につけさせようとしていたらしい。

「言っただろう? 私は独占欲が強いのだ。それに……」

 と、山茶花の髪飾りを見つめ微笑む。