帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

「とにかく、私たちは互いのことをよく知らない。まずは知るために明日にでも買い物に出かけてみないか?」
「え?」
「琴子の着物や生活用品を購入せねばならぬしな。丁度良いだろう」

 ご機嫌に話す朱縁に、琴子は力が抜けるような心持ちになる。
 ずっと大事なお役目だと思っていたことが実は人間が勝手に作ったお役目でしか無いと判明したこともあり、どうするのが最良なのかすぐには判別出来なかったことも理由だろう。
 琴子自身、考える時間が必要だと思った。
 お互いのことを知ろうというならば、すぐに手を出すなどということもないだろう……多分。
 どう結論を出すにしても、時間が欲しかった琴子は数拍考えてから頷いた。

 ***

 その日は父に【時間がかかりそうだ】という旨の手紙をしたため、ゆったりと過ごした。
 朱縁はやるべきことがあるのか、屋敷を空けていて朝会ったきりだ。
 琴子は手持ち無沙汰になり、利津から借りた裁縫道具で刺繍をして過ごした。
 そうして翌朝起きたときにふと思いつく。

「……まずはお互いのことを知ろうということなのだから、嫌われてしまえば離縁出来るのではないかしら?」

 最良の答えが何かなどまだ分からないし、結論を出すには時間がかかる。
 だが、父からの手紙のこともあるしやはり離縁出来るならばした方が良いだろうと思う。
 気に入られてしまってからでは嫌われるのも一苦労となってしまうだろうから。
 ちゃんと嫌われることが出来るのか、嫌われたとして、朱縁が自分を手放してくれるのか。
 それは分からなかったが、試してみようと思った。


 ……思った、のだが。