帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

「それは子を産んだからだろう。鬼花の持つ妖力が子へと受け継がれるから異能持ちとなって生まれるのだ」
「あ、だから副産物と……」

 朱縁の答えに先ほどの話を思い出す。
 守護鬼の花嫁となりかの鬼の妖力を得て、離縁の後強い異能持ちを産み育てるのが櫻井の長女の役目。
 そう教えられてきたが、朱縁の本来の狙いを聞いた後では確かに副産物として出来たお役目なのだろうと分かる。
 だが、朱縁の思いはともかく、人の世では長くそのお役目を続けてきたのだ。そう簡単には覆せない。

(どうしましょう……出来れば離縁したいのだけど、朱縁様はしてくれなさそうだし……)

「……琴子」

 朱縁の顔も見れず悩む琴子に、彼はゆっくりと衣擦れの音を響かせて近付いた。
 伸ばされた手が琴子の頬に触れ、視線を合わせられる。

「っ」

 慣れぬ男の硬い指。女とは違う力強さ。何よりその近さに琴子は息を呑む。
 朝の光を受けほのかに光る銀の髪。その隙間から覗く色の濃くなった紅玉の目。
 生きた宝石のような存在に、琴子は自分を制御出来ない。

「あ、あのっ! 何故そのように近く!? というか、何故私はあなた様のような殿方が近くにいても気分が悪くならないのでしょうか!?」

 今までは同じ部屋に異性がいるだけで気分が悪くなったのだ。
 なのに朱縁だけは何故平気なのだろう?