帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

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 まずはゆっくりお休みくださいと言う利津により、昨日はそのまま一泊してしまったのだ。
 突然状況が変わり混乱していたところもあるので、言われた通りゆっくり休み今日しっかりとお話しようと思っていたところにこの父からの手紙だ。
 ちゃんとお役目を全う出来るように離縁するつもりではあるが、まずは話してみないことにはどうにも出来ない。
 琴子は手紙をたたむと、よし、と気合いを入れて立ち上がった。

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 朝食後訪ねた朱縁は、昨日とは打って変わって落ち着いた装いをしていた。
 唐紅の着流しは同じだが、着崩れてはおらず襟元もしっかり合わせられている。
 上からは山吹茶色の羽織を着ていて、緩く結った銀糸の髪もほつれが無いため変な色香は出ていない。
 だが、身だしなみを正している朱縁は雰囲気も整えられていて昨日とはまた違った魅力があった。

「琴子の方から訪ねてきてくれるとは、嬉しいかぎりだ」

 薄い整った形の唇を緩め、赤い紅玉の目を幸せそうに細める朱縁に琴子はなんとも気まずい思いをしていた。
 詳しい事情は分からずとも、利津から聞いた話だけで朱縁がずっと唯一の伴侶とやらを探していたことは理解できる。
 それが琴子であり、やっと見つけた相手だと喜ぶ朱縁に離縁を望むとは言いづらい。
 だが、言わねばならない。

「その……私が朱縁様の望んでいた花嫁だということはなんとなく理解しているのですが……それでも離縁していただけないでしょうか?」
「無理だ、離縁などしない」

 ニコニコと笑顔で即答されてしまった。