帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

「どんどん現世(うつしよ)への執着が無くなっていく朱縁様のためにと新しいものを率先して集めて参りましたが……琴子様のお好みに合ったのでしたら嬉しいことですわ」
「現世への執着?」

 嬉しいと口にしながらも寂しそうに語る利津に、その原因と思われる言葉を問い返す。
 現世とはいわゆるこの世、皆が生きているこの世界のことだろう。
 執着が無いとはどういうことだろうか?

「はい。朱縁様は少なくとも二千年は生きておられる最強の鬼です。ですが最強ゆえ、共にその生を歩めるものはなく……帝と契約し花嫁を求めたのも共に生きる存在を探すためだと聞きしました」
「え?」

 唐突に知った朱縁が花嫁を求める理由に、思わず驚きの声が漏れる。

(守護鬼の花嫁――鬼花とは、長く生きる朱縁と共に生きる存在を探すためのもの? でも、共に過ごすどころか今まで一度も会ったことがないのだけど……)

 しかも、人の生は鬼に比べると短い。
 だというのに共に生きるとはどういうことなのか。
 探していた、とは?
 分からないことばかりでなにから聞けば良いのかも分からず、問い返せないでいるうちに利津の話は続いた。

「ですが唯一の伴侶となられるお嬢様はずっと見つからず……もはや諦め、ただ生き、帝都の守護をするだけの人形のような状態になっておりました」

 悲しげに目を伏せ視線を下に向けた利津だったが、「ですが!」と突然勢いよく顔を上げる。