つかの間、淡々と自らの半生を振り返っていた美穂は、つややかな男の声音に顔を上げた。
自分を見つめる明るい鳶色の瞳。
鮮やかな光彩を放つそれは、まぶしいほどの強い意志を感じさせる。
(……なんか、うっとうしい……)
強すぎる光は、濃い影を生む。
美穂は、自身が平らげた膳に視線を落とした。
「あら。まだ食べ足りない? 菊───」
「いらない。ご馳走さま。あんたとする話もないから」
言って立ち上がりかけた美穂は、慣れない着物のすそを踏みつけ、よろめく。
すかさず伸びてきた腕が、美穂の身体を支えた。男の、腕だった。
「やっ……」
「ほら、みなさい。身体に合わない衣のせいよ。アンタ、今までどういう身なりで育ったの?」
拒絶の悲鳴は直後に腰から離れた腕により、のみこまれた。
ふたたび座りこむ羽目になった美穂は、くやしさのあまり、したり顔の男をにらみつける。
「こんなっ……動きにくくて重い着物なんか、七五三以来だよ!
だいたい、そでもすそも、動くのに邪魔っ」
「……聞いた? すぐに取りかかって」
「はい。承知いたしました」
自分を見つめる明るい鳶色の瞳。
鮮やかな光彩を放つそれは、まぶしいほどの強い意志を感じさせる。
(……なんか、うっとうしい……)
強すぎる光は、濃い影を生む。
美穂は、自身が平らげた膳に視線を落とした。
「あら。まだ食べ足りない? 菊───」
「いらない。ご馳走さま。あんたとする話もないから」
言って立ち上がりかけた美穂は、慣れない着物のすそを踏みつけ、よろめく。
すかさず伸びてきた腕が、美穂の身体を支えた。男の、腕だった。
「やっ……」
「ほら、みなさい。身体に合わない衣のせいよ。アンタ、今までどういう身なりで育ったの?」
拒絶の悲鳴は直後に腰から離れた腕により、のみこまれた。
ふたたび座りこむ羽目になった美穂は、くやしさのあまり、したり顔の男をにらみつける。
「こんなっ……動きにくくて重い着物なんか、七五三以来だよ!
だいたい、そでもすそも、動くのに邪魔っ」
「……聞いた? すぐに取りかかって」
「はい。承知いたしました」



