それからもふたりの穏やかな生活は続いた。
切神は時折村人からお願いされた縁切りを果たしに村へ下りていく。

が、神域から出ればその姿は誰にも見えなくなるようで、神様の姿を見たものは誰もいない。
「今日もお疲れさまでした」

ひと仕事を終えて戻ってきた切神にお茶を差し出すと、それを美味しそうに飲む。
「あぁ。今回はやっかりな商人と客人との縁切りだった」

「商人と客人ですか?」
「そう。どっちもどっちという内容だったが、ふたりの縁がこれ以上続けばきっと互いの家を巻き込んだ騒動になる」

「そんなに相性が悪かったんですね」
切神はひとつ頷いた。

縁と言っても様々なものがある。
人と人との縁。

土地と土地との縁。
動物と植物との縁。