「おい、なにしてるんだよ」


豊が後ろから声をかけたとき、美幸の手がガラスから伸びて明日香の手首を掴んでいた。


実際には明日香が自分で窓を開けたのだけれど、そう見えていた。


「窓を閉めろ」


もう豊の声は届かない。


明日香は美幸に手をひかれるがままに窓の外に身を乗り出した。


「やめろ!!」


豊の叫び声は虚しく雨音にかき消され、そして明日香の姿は窓の外へと消えていた。


「明日香!」


その後を追いかけて豊が窓から飛び降りる。


1階の窓から飛び降りても死ぬことはないが、そのタイミングで雷が鳴り響いた。


鼓膜を破ってしまいそうな轟音と共に稲光が2人の体を貫いた。


ビクンッと大きく跳ねたかと思うと、焦げ臭い匂いが周囲に立ち込める。


雷によって串刺し状態にされたふたりの体は、もう二度と動くことはなかったのだった。