もしこれが本人だったら逃せない──可能性は測れないが、なきにしもあらず。
 (というか本人でなくとも、こんなところでコーヒーだなんて、なんだか不審な気もする)
 そう思った私は、一応不審な人物でないかという名目で上原かどうかを確かめるべく、コーヒーの彼の顔を何度も見てみた。
 結果から言うと、全く違う人物であった。
 この時なぜか私はホッとしてしまったが、それはまた別の機会に。
 住民としてコーヒーの人が不審者でないことを確認しようと彼の目の前を通り過ぎてもなお、何度か彼の方を見てみたが、彼は変わらずゴミストッカーに置いたコーヒーを飲んでいた。
 それにしても、あれほどに上原と似た雰囲気を持った人物は初めて見た。
 吉夢続きの日々の中で起きたことなだけあって、どうも不思議な気持ちになった。