クール天狗の溺愛♡事情

「……山里先輩!?」

 大丈夫なのかと叫ぶけれど、彼は顔を上げて少し申し訳なさそうに言った。

「ごめん、霊力切れになっちゃったよ」

「……」

 何とも言えずに黙り込んでしまう。


 そういえば初めて会ったときも霊力切れで倒れていたんだっけ。

 さっきから力を使っていたから、霊力が足りなくなってしまったのかもしれない。


 でも意識がなくなるほどじゃないみたいだからまだ良かったのかな?

 ホッとしたけれど、今の状況を考えると安心してもいられない。


「那岐……変転までするからだ」

 呆れ顔でそう言う風雅先輩に、山里先輩は困り笑顔で返す。

「いやぁ……半変転なら大丈夫かな、と思って……」

 何か言い訳をしているけれど、結局倒れちゃうならダメだと思う。


「はは……まあ、これで一対一か? でも美沙都はもう俺の手にあるからな。このまま連れて行くだけだ」

 うつぶせになっている山里先輩を笑い、煉先輩はわたしを引っ張っていく。

 小柄なわたしが先輩――しかも男の人に力で敵うわけがなく、引きずられるように連れて行かれる。


「や、やだ。離してください! わたし行きませんから!」

「美沙都!」

 風雅先輩が助けようと来てくれるけれど、煉先輩が火の玉を投げつけて近付かれないように邪魔をする。