クール天狗の溺愛♡事情

 でもそうしてなんと言えばいいのか迷っていると、後ろの方から煉先輩の声が聞こえてきた。

「美沙都! 那岐! どこ行きやがった!?」

 まだ遠いけれど、怒鳴り声がハッキリ聞こえるくらいには近い。


「もう気づいちゃったのか。流石は火鬼と言うべきか……」

 少しヒンヤリとした声でつぶやいた山里先輩は、「とりあえず外に出よう」とわたしを生徒玄関の方へ連れて行った。

***

 それぞれ靴を履き替えて、外に出る。

 とりあえず煉先輩にはまだ気づかれていないと思うけれど……。

「さて、どこへ向かうべきか……。校舎裏でやり過ごす? でもそこで見つかったら不利だし……」

 何やら口内でつぶやきながら考える山里先輩。

 とりあえず昼休みをやり過ごせれば何とかなると思うんだけど……。


「よし、校庭の方に向かおう。あそこなら人目もあるし、もし日宮に見つかっても助けを求められるだろう」

 そう結論を出した山里先輩にわたしは素直に付いて行く。

 どうしたらいいかなんてわからないし。


 校庭の方に向かいはしたものの、一応植え込みの陰になるように隠れながら移動する。

 山里先輩は見つかった場合を考えてこっちに来ることを選択したけれど、見つからないに越したことはないからね。