クール天狗の溺愛♡事情

「でも日宮は強いから、きっとすぐに戻ってしまう。だから今のうちに逃げよう」

「あ、えっと……はい」

 少しだけ考えて、頷いた。

 とにかく今は煉先輩から逃げ切ってしまった方がいいとわたしも思ったから。


「じゃあ行こう」

 山里先輩はそう言うと、自然な流れでわたしの手を取り歩き出した。

 自然すぎて、ん? と思ったときにはしっかり手を握られていて……。

 つながなくても良いんじゃ……なんて言い出せなくなっていた。


 しかもその腕を器用に伝って、コタちゃんがわたしの方に移動してくる。

「キー」

 定位置でもある肩に乗ると、嬉しそうにスリスリされた。


「ふふっ可愛いな」

 こんなときだけれど、コタちゃんの可愛さにホッコリしてしまう。

 その様子をジッと見ていた山里先輩もホッコリした表情で口を開いた。


「そんな瀬里さんもとても可愛いね」

「へ?」

 山里先輩もコタちゃんを見て可愛いと言うと思ったのに、まさかのわたしだった。


「こ、こんなときにからかわないでください」

「からかってないよ。本気」

「っ!」

 いつものホワホワした笑顔で言うから、どう受け取ればいいのか分からない。