クール天狗の溺愛♡事情

「無理じゃねぇ! じゃあ今からでもデート行くぞ! 来い!」

 イラついた様子の煉先輩はそう言って手を伸ばして来た。

「ええ!?」

 叫びながら何とか煉先輩の手から逃れようと後ろに下がると、間に仁菜ちゃんが入ってくる。


「ダメですよ。授業サボるつもりですか?」

「仁菜ちゃん……」

 煉先輩が怖かったから、仁菜ちゃんの助けがとても嬉しい。

 でも煉先輩からしてみればただの邪魔者にしか見えないみたいで……。


「ああん? 邪魔すんな」

 目つきをさらに悪くさせて凄んでくる。

 仁菜ちゃんも流石に怖かったみたいで、ビクッと震えた。


「あれ? 何で日宮がいるの?」

 そこへ場違いなほどのほほんとした声が響く。

 見ると、いつものようにお菓子を持ってきてくれたらしい山里先輩がいた。


「ああ? お前こそ何で一年の教室になんか来てるんだよ、那岐」

 不機嫌そうに問い質す煉先輩にもひるまず、山里先輩は無害そうな微笑みを浮かべてわたしを見た。

「僕はそこの瀬里さんに毎日お菓子をあげててね。……もう一度聞くよ? 日宮は何でいるの?」

 微笑みは優しそうなのに、なんでだろう? 後半の言葉には冷気を感じた気がする。