クール天狗の溺愛♡事情

「いい加減滝柳に邪魔されるのもうんざりしてきたんだよ。それに、話したいこともあったからな」

「話したい事、ですか?」

「ああ。この間女子連中に呼び出されたって聞いたぞ? で、具合悪くなって倒れたって」

「あ、それは……」

 まさか煉先輩の耳にも入っていたなんて。


 もしかして心配してくれてたのかな?

 優しいところもあるんだなって見直しかけたけれど、ちょっと違ったらしい。


「俺から逃げ回ってばかりだからそんな事になるんだよ。俺の嫁になるって言え、そうすればちゃんと嫁だから手を出すなって宣言して守ってやる」

「は?」

 何だかズレた物言いに頭がついていかない。

 煉先輩から逃げ回っているから女子に呼び出されたってこと?

 え? 違うよね?

 煉先輩だけが原因じゃなかったし……。


 とりあえず。

「えっと……とりあえず嫁にはなりませんよ?」

「お前、この後におよんで!」

 目を釣り上げる煉先輩にビクッと思わず震えるけれど、わたしが好きなのは風雅先輩だもん。

 例え両想いになれなかったとしても、だからといって煉先輩の嫁になんてなれない。


「お前が俺の嫁になるのは決定だって言っただろ? さっさと惚れろよ!」

「む、無理ですー!」

 怒鳴る勢いで言われて涙目になったけれど、頷くことはやっぱりできない。