「……でも、滝柳先輩が美沙都ちゃんのこと好きなのは確実だと思うんだけどなぁ?」

「わたしも、それくらい確信を持てたらいいんだけどね……」

 はぁ、と二人同時にため息をついて苦笑いを交わし合った。

***

 風雅先輩への恋心を自覚したとは言っても日常が特に変わるわけじゃない。


 相変わらず山里先輩はお菓子を持って来るし、煉先輩はわたしを嫁と呼んで強引にデートに誘って来るし。

 そして風雅先輩はいつもわたしを助けに来てくれる。

 自覚した分風雅先輩を意識することは多くなったけれど、気持ちを伝える勇気は出ないまま似たような日々を過ごしていた。


 そんな日常がガラリと変わったのは、珍しく煉先輩が昼休みにわたしの教室に来た日だった。


***

「おい、俺の嫁――美沙都はいるか!?」

「なっ!? 煉先輩!?」

 毎日来る山里先輩に周りも慣れてきたのか、最近ではそこまで騒がしくなかった昼休み。

 今日は珍しく廊下が騒がしいなと思ったらまさかの煉先輩だった。


 あまり騒ぎを大きくしてほしくなくて、わたしはすぐにドアのところに来た煉先輩のもとへ行く。

「ど、どうしたんですか!? 教室に来るなんて」

 いつもは放課後帰り際に遭遇するはずの煉先輩に戸惑う。