「仁菜ちゃん……」

 友達思いの仁菜ちゃんにちょっと感動したのも束の間。

「でも! はたから見てるとすっごくじれったいの!」

 と、人差し指を突きつけられてしまう。

「ええぇ?」


「あの滝柳先輩だよ!? 友達と話しているときくらいしか笑わないし、女の子になんて全く興味ないって感じだった滝柳先輩だよ!?」

「“あの”とか言われても、わたしは甘い微笑みを浮かべる風雅先輩しか知らないし……」

 指を突きつけたまま力説する仁菜ちゃんに反論するけれど、彼女はそのまま言葉を続ける。


「それだよ! 美沙都ちゃんだけにあんなとろけそうな笑顔向けてたらもう確実でしょう!?」

「そんなこと言われても……もし仁菜ちゃんの言う通りだったとしても、どうしてわたしを好きになってくれたのかが分からないんだもん!」

「だからそれは初めて会ったときに何かあったんでしょう!? 思い出して!」

 両手を拳にして頑張って思い出せと言う仁菜ちゃんに困惑しながら、もう一度思い出してみる。


 はじめわたしに警戒していた風雅先輩が甘くて優しい微笑みを見せてくれたのは確か……。

「確か、コタちゃんが足を上って来て……ネズミかと思ったわたしはビックリして、思わず風雅先輩に抱きついちゃって……」

「ほうほう!」

 仁菜ちゃんが興奮気味に相槌を打つ。