離れていくキレイな手を目で追うと、そのまま風雅先輩の顔に引き寄せられた。

 まるで愛しいものを見るような優しい眼差しで微笑む、とてもキレイな男の子。

 トクリ、とわたしの胸も優しく跳ねた。


 でも同時にさっき言われたことを思い出す。

『風雅くんには使命があるの。その使命とあなたを天秤にかけたら、あなたなんてアッサリ捨てられるに決まってるわ』

 そんな薄情な人じゃない。

 今の微笑みを見て、なおさらそう思う。


 でも使命とまで言われるようなものと比べたら、わたしの存在なんて小さなものだろうなって思った。

 ツキン。


「……風雅先輩には、使命があるんですか?」

「ん? なんだ、突然?」

 針を刺したような胸の痛みを思い出して、思わず聞いてしまう。


「……煉先輩や、さっきの子達も言っていたので……」

「ああ……」

 理由を告げると納得したような声が返ってきた。


「そうだな、山の神の大切なものを守るために霊力を与えられたのが俺だから」

 やっぱり、大事な使命なんだな。

 その目に確かな力強さを垣間見て、それを確信する。


「風雅先輩にとって、大事な使命なんですね」