「何を、勘違いするんだ?」

 追及されてしまう。


「それは、その……」

 わたしのことを好きだと勘違いしそうになる、なんて……流石に口には出来ないよ。

 もごもごと答えられないでいると、フッと笑うような音が聞こえる。


「勘違いしても良いのに……」

「……え?」

 落ちてきたつぶやきにちゃんと風雅先輩を見ると、そこにはやっぱり優しくて甘い笑顔。


 今のは、どういう意味?


 聞き返したくて、でも答えを聞くのも怖くて、言葉に出せない。

 ただ、ドキドキする心臓だけが治まってくれない。


 どうしようも出来なくてただ見つめ合っていると、風雅先輩の方がまたわたしの手を引いて歩き出した。

「……帰ろうか」

 今度は初めから歩調を合わせてくれる。

 そんな少しのことにもトクンと胸が優しく鳴って……。


「このままじゃ、俺送り狼になりそうだから」

「えっ!?」

 笑って言うその言葉に、またどういう意味なのかって心臓がバクバクしてしまう。


 そんな止まらない心音に振り回されながら、わたしは風雅先輩に家まで送って貰った。