「……人それぞれの色の、《感情の球》?」

 でも、わたしの言葉に風雅先輩は足を止めて何故か驚いた顔をする。


「美沙都だけが見えるっていう《感情の球》は、みんな色が違うのか?」

「え? はい。多分、その人の本質みたいなものだと思うんですけど……風雅先輩?」

 本気で驚いているようで、風雅先輩は口元を片手で覆って何かを呟いていた。


「人の本質を見抜く力……そうか、美沙都は……」

 つぶやいた後、見開かれていた目が改めてわたしを見て細められる。

 いつもの優しい、甘さを含んだような微笑み。

 それに喜びが加わったような笑顔に、わたしの鼓動は一気に早くなった。


「っ! え? あの、風雅先輩?」

「ん?」

 ん? じゃなくて!


「あ、あのっ。どうしてそんな顔するんですか?」

「そんなって、どんな?」

 不思議そうに聞いて来るのに、とろけるような甘い笑顔はそのままで……。

 勘違いしそうになる。


 ドキドキと早まる心臓が、体ぜんぶを熱くしてるみたいで……。

 つないでいる手からその体温が伝わってしまいそうなほど。


「だ、だめですよ。そんな優しい笑顔向けられたら……勘違いしちゃいそうになります」

 これ以上期待しそうになることは止めて欲しい。

 そう伝えたはずなのに……。