「……美沙都」

 煉先輩の姿が見えなくなって、やっと風雅先輩が口を開く。

 でもその声は何だか少し硬いように思えた。


「あ、はい?」

「もう帰ろう。家まで送る」

「え?」

 硬い声のままそう言った風雅先輩はわたしの手を取って引っ張っていく。


「え? あ、その……」

 突然の申し出と、いつもより強引な様子の風雅先輩に戸惑う。

 それに仁菜ちゃんを置いて来てしまっているんだけれど、と思って引かれながらも振り返ると……。

 その仁菜ちゃんは片手でサムズアップをしてから笑顔でバイバイ、と手を振っていた。


 え? あれ? いいの?


 仁菜ちゃんの様子にも困惑しつつ、わたしは手を引く風雅先輩について行くように足を進めた。