無事にコタちゃんを見つけることが出来て教室に戻ると、ショートボブの黒髪を揺らしながら可愛い女の子が近づいてきた。

「美沙都ちゃん、コタちゃん見つかったの?」

「あ、仁菜(にな)ちゃん。うん、中庭の大きな木の枝に引っかかって戻れなくなってたみたい」

 仁菜ちゃんは猫又(ねこまた)のあやかしで、家もわたしの家とお隣同士。

 だから引っ越してきてその日に挨拶に行って、すぐお友達になってくれたんだ。

 入学したらクラスも同じで、これからもっと仲良くなれそう。


「そっか、良かった」

 安心したように笑顔になった仁菜ちゃんは、少しかがんでわたしのブレザーのポケットに隠れているコタちゃんを見た。

「あんまり美紗都ちゃんを困らせたらダメだよ? ただでさえ学校に連れて来ていいのかもわからないんだから」

「キー……」

 コタちゃんは反省するように鳴き、ポケットの中で縮こまる。

 本当は家に置いて行こうとしたんだけれど、どうやってもついて来て離れないから諦めて連れて来たんだ。

 ポケットの中で大人しくしていれば見つからないだろうしって。

 でも今朝はいつの間にかいなくなっていたから本当に焦った。

「心配するから、ちゃんとポケットの中で大人しくしていてね?」

「キー……」

 わたしにも言われて弱々しく鳴くコタちゃんが可哀想に見えて来たけど、本当に心配したんだからちゃんと反省はして欲しい。

 そうしてポケットの中を仁菜ちゃんと覗き込んでいると、クラスの女子の騒がしい声が聞こえて来た。