「はぁ? 俺が嫁にするっつってんだ。了承しろよ」

「ええぇ?」

 なのに煉先輩は強引に話を進めようとしてくる。

 話聞いてよぉ!

 本当に泣きたい気分になった。


「……日宮先輩。とりあえず今日は引いてくれませんか? 美沙都嫌がってるし、そんなんで遊びに行っても楽しくないでしょう?」

「なんでお前に言われなきゃならねぇんだよ。山の神の護衛は祠でも守ってりゃあ良いだろ? 人の恋路を邪魔すんな」

 恋路って……。


 別に恋してないですよね?

 思わずそう聞きたくなった。


 その確認の意味も込めて煉先輩の《感情の球》を見る。

 いつもならあまり見るのは良くないよね、と思っているけれど、煉先輩の気持ちだけはハッキリさせておかなきゃと思ったから。


 強さを秘めたような煉先輩の真っ赤な《感情の球》は、黄色に近いオレンジ色に光っていた。

 これは……多分興味深いものを見つけて楽しそう、って感じの色。


「美沙都以上に俺にふさわしい嫁はいねぇんだから、もう決定だろ?」

 そう言ってわたしを見る煉先輩。

 《感情の球》がわずかにピンク色を帯びる。


 でも、やっぱり違う。

 このピンク色は小学生のとき勘違いしたのと同じ色合いだもん。