クール天狗の溺愛♡事情

「一番質が良いのは神に連なるあやかしだが……ん? もしかしてお前――」

「何してるんだ!?」

 煉先輩が何か言おうとしたけれど、途中で鋭い声が掛けられた。

 聞き覚えのある声にドキリとしたあと、その人の存在に安心する。


 カラスの濡れ羽色の髪を揺らしながら近づいてきた風雅先輩は、わたしの腕を掴んでいる煉先輩の手を少し強引に外した。

「日宮先輩、この子に何か御用ですか?」

 わたしを後ろに隠すように、風雅先輩はわたし達の間に入る。

 刺々しい声と同じように、その目は煉先輩に刺すような眼差しを向けていた。


「用も何も。嫁とデートに行こうとしてるだけだぜ?」

「……嫁?」

 風雅先輩の声のトーンが一段低くなる。


「そうだよ。そいつ……美紗都は俺の第一嫁候補だからな」

「どういう、ことですか?」

 今度は震えてもいた。


 風雅先輩、怒ってるの?

「わ、わたし了承してません!」

 風雅先輩が何を思っているのかわからないけれど、変な誤解だけはされたくなくて叫ぶ。