そこには丁度帰るところだったのか、カバンを持った日宮先輩がいた。

「ひ、日宮先輩……」

 無視すれば良かったのかも知れないけれど、目が合ってしまったからにはそれも出来ない。

 一緒に帰ろうとしていた仁菜ちゃんがアワアワとわたしより挙動不審になっていた。


「煉って呼べっつっただろ? 今から帰るのか? だったら駅の方に行ってちょっと遊んでかないか?」

「い、行きません!」

 強引そうな日宮先輩にはハッキリ言った方がいいかもしれないと思って、わたしは勇気を振り絞ってキッパリと伝える。

 でも、そんなわたしの勇気は「いいじゃねぇか」という言葉で一蹴される。


「この里の中じゃ遊ぶとこなんてないだろ? 結界の外の駅前なら日宮家が出資してるから色んな店とかもあるし」

「それはそうですけど……」

 日宮先輩の言葉に、この里に戻って来たときのことを思い出す。


 駅から出てすぐの様子は人間の街とあまり変わりなかった。

 見慣れたチェーン店やゲームセンターに、デパートもあったっけ。


 田んぼや畑が多い田舎の風景だと言っていたお母さんもビックリしていたな。

 まあ、結界の中に入った途端お母さんの言っていた通りの風景になったんだけど。