お昼休みの出来事は、瞬く間に学年中に知れ渡ってしまったみたい。

 他の学年にも広まるのは時間の問題というところ。

 それでもちゃんとわたしが言った説明も一緒に広まっているならまだ良かったんだけれど……。


「あの子? 山里先輩と付き合ってるとかいう子」

「え? 確かあの子って滝柳先輩に気に入られてる子じゃない?」

 あれだけ小動物扱いされているだけだと言っておいたのに、その部分は全く噂になってない。


 うう……せめて直接聞いてくれれば否定出来るのに……。

「これは困ったねぇ……」

 わたしの心を代弁してくれるのは仁菜ちゃんだ。

 でも仁菜ちゃんでも解決策は思いつかないようで眉尻を下げるばかり。


「とりあえず、今日は早く帰ろっか?」

「うん、そうする」

 色んな視線を浴びているのが居心地悪くて、仁菜ちゃんの提案に即答した。


 そうしてとにかく急いで学校を出ようとしたからかもしれない。

 あれだけ気を付けて避けていたはずの日宮先輩に、ついに見つかってしまったんだ。

***

「お、やっと会えたな、俺の嫁!」

 丁度外靴に履き替えたとき、結構大きな声でそんな言葉がかけられた。

 思わずビクリと震えて振り返ってしまう。