わたしは「倒れていたところを助けただけ」とか、「小動物扱いされてるだけ」と口にするけれど、みんながちゃんと聞いてくれたかは怪しい。

 騒ぎがちゃんと収まる前にチャイムが鳴ってしまい、午後の授業のためみんな仕方なく離れていっただけだったから。


 わたしも慌てて自分の席に戻ると、先生に見つからないようにもらったフィナンシェを隠した。


「美沙都ちゃん、大丈夫? ごめんね、助けに行けなくて」

 先生が来る前に、仁菜ちゃんが心配そうに聞いてくる。

「仕方ないよ、あれじゃあまず近づけなかっただろうし」

 さっきわたしに群がっていた人数を思うと、仲裁に入ることも出来なかったと思う。


「そっか、ありがとう。……でも、変な噂にならなきゃいいね」

「うん、そうだね……」

 まだ何かを聞きたそうにこちらをチラチラ見るクラスメートを見渡しながら、わたしは仁菜ちゃんの言葉に同意した。