そうしている間にも彼らの会話は続けられていた。

「お前が必要としてるのは霊力の高いあやかしなんだろう? だったら別にこの里じゃなくたっていいじゃないか!?」

「そうだよ、嫁探しなら別でやれ。迷惑なんだよ」


 よくわからないけれど、話の内容からいじめられている人は外から嫁探しのためにこの里へ来ているってことらしい。

 でも中学生のうちから嫁探しって……。

 どんな事情でそんなことをしているんだろうとその人を改めて見て気づいた。


 この人確か、日宮先輩……だったよね?

 風雅先輩とは正反対の赤みを帯びた黒髪。

 その長めの黒髪を後ろで1つに結んでいる髪形は結構目立つし覚えていた。


 何より、主に女子の間でよく話題に上がる人だから。

 その日宮先輩は冷たく見えるほどの無表情で面倒そうに彼らに答える。


「……別にいいだろ? ここの山の神には許可も得てる」

「それこそおかしいだろ? 山の神はここ十二年眠っているんだ。いつ許可を取ったって言うんだよ!?」

「はぁ……眠っていても対話する方法はあるんだっての」

 うんざりした様子で前髪をかき上げる日宮先輩。

 同じような説明を何度もしているのかもしれない。