それに応えるようにわたしはペコリと会釈した。


「次は音楽か? 美沙都が歌うところも見てみたいな」

「聞かせるほどうまくないですよ?」

「それでも聞いてみたいよ。……じゃあな」

 と、頭にポンと手をのせて去って行く風雅先輩。
 そんな、すれ違いざまのちょっとしたやり取り。

 でも、そんなやり取りですらたまたま周囲にいた人たちにとってはかなりの衝撃みたいで……。


「滝柳先輩、あんな風に笑うことあるの!?」

「ってかあの子誰だよ!?」

「ちょっと! あなた滝柳先輩とどういう関係!?」

 と、風雅先輩が見えなくなった途端詰め寄られる。


「みなさん落ち着いてくださーい!」

 一緒にいた仁菜ちゃんが抑えてくれて、何とか聞く体勢になってくれた。

「山で迷ってたところを助けてもらっただけです。小動物扱いされているだけです!」

 何度も口にした説明を今回も言う。


 校内で風雅先輩と会うと繰り返される光景。

 何度詰め寄られても慣れる気はしないけれど、言うべきことはこの2つだけってハッキリしてきたと思う。


「助けてもらった?」

「小動物扱い……ああ……」

 小動物扱いされているって言うといつも納得される。


 うう……小柄なのは今だけだもん。
 これから成長期が来るもん!