クール天狗の溺愛♡事情

「ってことは、勝負は残り七年か」

「七年ね……。それだけあるならたくさんアピールする機会はありそうだ」

 お父さんの言葉が免罪符みたいになっちゃったのか、そんなことを言う煉先輩と山里先輩。


「え、ええぇー……」

 もう本当にどうすれば。


「ッチ、逃げるか」

「え?」

 舌打ちと一緒に降りてきた言葉に疑問を浮かべていると、風雅先輩が体に力を入れて翼を出した。

 フワリと反動で抜け落ちた黒いカラスの羽がいくつか舞う。


「美沙都、飛ぶぞ」

「は、はい」

 飛んで逃げると気づいたわたしは、慣れた手つきで風雅先輩の首に腕を回した。


「穂高さま! ちゃんとしたご挨拶はのちほど!」

 わたしを抱いた風雅先輩はそう叫ぶとすぐに地を蹴る。

 バサリと大きな翼が羽ばたき、風が舞う。


「滝柳! お前いつも言ってるけど飛んで逃げるのは卑怯だぞ!?」

「あーあ……。まあ、今は仕方ないか」

 怒りをあらわにする煉先輩と、仕方なさそうに息をつく山里先輩の声を後にわたしは風雅先輩と飛び上がった。


「あー! 僕も連れてってよー!」

 途中でコタちゃんの声が聞こえてきたけど……ごめんね、今は二人だけにして欲しいな。